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としょりの気持ち


介護の達人が語った26の物語
小島つる江・高戸谷千志美・藤森素子・宮島渡・村岡裕/著


装幀:酒井隆志
本文イラスト:石川孝[NOEL]
2001年9月29日発刊(2007年12月6刷)
四六判・128ページ
本体価格1,143円+税(税込1,234円)
ISBN4-900918-45-8 C0036

★著者プロフィール

▼推薦:鎌田實
▽読者の声

泣き笑いエピソード集

介護の現場で何百人ものお年寄りに出会い、寄り添い、暮らしをともにしてきた“介護の達人”5名が語った、涙と笑いの経験談です。家族も知らなかった、お年寄りの“本当の気持ち”があふれています!

26のさまざまな具体例を、介護する「こころのテキスト」に!

介護・福祉関係の講座にテキストとして採用されています。

※本書は、さまざまな立場で老人介護にたずさわる5名の「介護実践のプロ」が、自らの経験をもとに語りおろしたエピソードをまとめたものです。
なお、プライバシーを守るため、登場人物の氏名、性別、年齢等は事実とは異なる設定としました。

もくじ+はじめの二行!

●ナミばあちゃんのおもてなし|痴呆の重さと幸せの関係
入浴サービスをする私のことを、「風呂入れてくれる姉ちゃん」と呼んでくれたのはナミばあちゃん。……
●世話んなってるお返しに|「してあげたい」気持ちの復活
私が勤めるホームでは、体の弱い人は近くまで、元気な人は少し遠くまで散歩をするのが日課だった。……
●おばあちゃんのお茶番|家族がぶつかる理想と現実のギャップ
親に、いわゆる「呆け」の症状が現れると、とかく家族は、いろいろなことを禁止しがちだ。……
●味噌むすびが食べてえなぁ|「何でもいいよ」に隠された思い
「うちのおばあちゃん、何も食べてくれなくて困っています」そんな相談を受け、ご近所でも大家で知られる九十二歳の……
●ここで小便をするべからず|排泄問題から時代が見える
排泄の問題に悩む、痴呆老人は多い。相談してきたのは、八十代のヒロシさんの奥さんだ。……
●あんたは、どこから来ただかい?|年の功には叶わない
「すごい呆けてるけど、大丈夫かな?」と家族に心配されながら、初めてデイケアを利用したのりさん。……
●奥さん、色男を連れ込むの巻|相手の舞台に立つということ
ホームの職員で大騒ぎした「事件」があった。ある職員が、ちょっと風邪ぎみのマツさん(七十八歳)を介抱していたときのこと。……
●下駄箱は寝床の横に限る!|「常識」が介護の邪魔をする!?
「とにかく履き物を、みんな寝床に持って来ちゃうおじいちゃんがいるんだよ。どうやったって寝床が砂だらけになって困っちゃう。……
●軽トラに乗ってうちへ帰ろう|子どもだましのウソはもういらない
「うちへ連れてってくれや」あるとき、八十歳で痴呆の正夫さんが言った。それに応え、ある職員がデイサービスのバスで、……


●何年かぶりに風呂入ったわい|「心」に届く介護って?
それは、保健婦の仕事を始めた十五年ほど前のことだった。私はいつものように、八十代後半のちっちゃなちっちゃなトシばあちゃんのお宅へ、……
●野良着にだってワケがある|繰り返しの技法
九十歳の千代さんは、いつも古い服を着てしまう。若いときから畑仕事で家族を養ってきた、一家の大黒柱だった千代さん。……
●タンスはおじいちゃんの宝箱!?|本当の「介護の技術」
これは、ある七十代のご夫婦の話。奥さんが、ご主人の痴呆にどう関わっていいかわからないということで、……
●どうしてこのうちは昼メシ出ねえだい!?|認めることから始めよう
ある日のこと。お昼を食べて一時間もしないうちに、「ご飯食べてない」という入居者がいた。……
●長寿の秘訣ここにあり|保健婦のマル秘健康講話
かつて、介護関係の仕事に携わる四十代の男性に聞いたことがある。「年をとると、変な雑誌見たいと思うことないんですか?」……
●バチが当たる、バチが当たる|呆けてもボケない心がある
「うちじゃお風呂だって入ってくれないし、目を離すと外へ出てっちゃうんだから」と、涙なみだのお嫁さん。……
●信長に切られそうになったおばあちゃん|妄想は本人が一番つらい
痴呆老人の妄想というのは、私たちには想像もつかないことがある。一人暮らしの方のお宅に、ヘルパーとしてうかがっていたときのことだ。……
●異邦人体験|自分の居場所を見つけること
老人ホームの施設長になることが決まっていた私は、ある福祉先進国へ研修に出掛けた。ところが、とんでもない連絡ミスで、……
●102歳「ツッパリのミツ」の涙|最後まで自分らしく生きる
一〇二歳で亡くなるまで、一人暮らしをしていたミツさんは、早くにご主人をなくし、苦労して息子さんを育てられ、……
●おらはどうしたらいいんだい|おばあちゃんと家族の深い溝
脳卒中で倒れ、左半身が不自由になった八十八歳のクニさんが、私たちの施設に入所することになった。……
●出世払いを誓った九十五歳|舅と嫁の三十年
義父とともに暮らした三十年は仕事に役立ち、ヘルパーという仕事は義父と付き合うことの理解に役立った。……


●露出じいちゃんと夜這いじいちゃん|さみしい気持ちはどこへ?
ある施設に、二十代の女性ケアワーカーに嫌われてる、いわゆる「露出狂」のじいちゃんがいたという。……
●犬に最敬礼!|介護は生活そのものだ
朝食後、お天気がよかったので、お年寄り六人とご近所を散歩していたときのことだ。一匹の小さな犬が、……
●裏切られつづける老人たち|こんな施設はもういらない
私がサラリーマンを辞めて、一番最初に出会った老人ホームはひどい場所だった。多分、ひどいものを見てしまったから、……
●今日もまた生きてたわい|役割と作業と生きがいと
ある日のこと。朝早くから、八十歳間近の小林さんはベッドに座っていた。「おはようございます」と挨拶をしたところ、……
●もう、がんばれって言わないで|新しい自分を受け入れること
脳出血で倒れ、車椅子での生活を余儀なくされた七十歳の茂さん。元気で働き者だった人なだけに、……
●大根があるから大丈夫|蘇る地域社会
私たちの施設があるこの地域の老人たちにとって、野菜を作るということは、生きていることの喜びであり、……
痴呆老人をめぐるささやかな幸福論/矢嶋嶺

編集後記

総論●痴呆老人をめぐるささやかな幸福論

診療所所長 矢嶋嶺(元長野大学教授)
痴呆老人は病気か
痴呆の定義について教科書にはこう書いてある。
「一旦獲得した知的機能が低下する進行性の病気で、脳に何らかの病気が存在し、自立した生活が出来なくなってきた状態……」
これによると、れっきとした「病人」扱いである。その上、脳細胞の萎縮とか血管障害のあることが前提となっている。実際、遠まきに眺めている無関係の人たちから見ると、痴呆老人は普通の人とずいぶん違って見え、精神障害だと思われているふしがある。
しかし、九十過ぎて百歳に近くなれば、脳梗塞や脳萎縮のない老人はまずいないだろう。つまり長生きしていれば、大部分の人は老化により脳細胞の機能の低下が起こる。痴呆はこの年相応の変化と重なっていて、言葉少なになった後期高齢者との違いが分からぬこともしばしばある。
本書の著者たちの描く痴呆老人の姿には、精神障害の人には見られぬ滑稽なしぐさや幼児のようなあどけなさがある。時にいやな思いでケアすることもあるかもしれないが、この可愛さにひかれて仕事を続けているに相違ない。
二十年前に武石村診療所に赴任したとき、訳の分からぬことを言いながら徘徊する老人に出くわしたが、考えてみるとこの頃から痴呆性老人の出現が一般化したように思われる。これは超高齢社会に突入した時期に一致している。
痴呆性老人の頭の中
大量収容型老人ホームの痴呆棟の老人を観察して気が付くのだが、行動や表情に動きが見られない。そばに誰がいようと気にしない様子で、他の人との関係性がみられない。
三好春樹氏は痴呆症状の出現は「人間関係障害」と言っているが、その通りだ。グループホームにあるような小さいごみごみした部屋で、少数のスタッフと普通の生活を始めると老人の表情は一変する。相性のよいスタッフとお茶など啜っているときは、喜怒哀楽を素直にあらわし、普通の人間的な老人になってしまう。特にお茶をいれる仕事を手伝っているときは、生きている喜びが背中から溢れている。この変化はどこからくるのだろうか。
回診するとき「あんたは誰?」などと言っていた呆け老人が、こういうときには「この味噌汁はおいしいね。ありがたいことです」などと言い、その表情は間延びはしているがいきいきとしている。しかし再び痴呆棟に戻れば、以前のように無表情で周辺の人との関係性を失った孤独な老人に戻ってしまうのである。
こうなると、痴呆老人とはどのような「病人」なのか、再び私は考え込んでしまう。
では、痴呆老人がいきいき生活できるのは、ケアの仕方のどこが違うのか。
表情を失ってひっそりしている老人は、はつらつとした人間関係のなかで生きていないのではないか。その例が老人ホームの痴呆棟である。スタッフに見張られ、管理され、囲いの中の羊に近い。強制は何もないように見えるが、管理と被管理が基礎となって柔らかいコントロール下にいる。人間が自分らしく生きるためには自由が不可欠だ。少しくらい知的機能が低下していても、自由を求める気持ちは変わらない。その「権利」を保障できるのは、スタッフとの人間関係が築かれていて、相互に信頼関係が保たれているときだけだ。
共同住宅や少人数の暮らしで、相性の良いスタッフに囲まれている痴呆老人は、スタッフと対等な人間関係にある。鍵を取り外し、自然の大地を自由に歩けるようになれば呆け老人はもっと生き甲斐が増すに違いない。徘徊とか問題行動などと言われようと、本人にはそれなりの目的があるはずだ。
今の日本の老人対策、特に痴呆老人ケアは、水準が低いと思わざるを得ない。金もかかるし人手もいるが、いずれはもっと高水準の介護体制が整うに違いない。戦中戦後を生き抜いてきた人生の最終段階にいる痴呆老人はもっと大切にされるべきだ。

【推薦】鎌田 實/諏訪中央病院管理者

「ボケ」も「寝たきり」も、もう怖くない。
人間ていいなぁ、人間てすごいなぁ、と思いながら僕はこの本を読んだ。泣いたり、笑ったりしながら……。

★著者プロフィール

小島つる江(こじまつるえ)
グループホームにこにこハウス、にこにこの湯(山ノ内町)所長
1934年生まれ。1969年より山ノ内町でホームヘルパーとして勤務。1995年に山ノ内町社会福祉協議会を退職し、2000年より現職。長野県介護福祉士会初代会長を務め、現在は名誉会長。介護福祉士。

高戸谷千志美(たかとやちしみ)
信州新町保健師
1963年生まれ。国立療養所東長野病院附属看護学校・長野県公衆衛生専門学校保健婦学科卒業後、個性的な保健婦との出会いをきっかけに信州新町に就職し、現職。有線TVの介護番組の企画等も手掛ける。

藤森素子(ふじもりもとこ)
ニチイ学館専任講師
1938年名古屋生まれ。柳城女子短期大学(現名古屋柳城短期大学)卒業後、幼稚園・保育園に勤務。1980年より岡谷市社会福祉協議会勤務。心身障害児母子通園訓練施設を経て、ホームヘルパー。1999年より現職。介護福祉士。

宮島渡(みやじまわたる)
高齢者総合福祉施設アザレアンさなだ(上田市)施設長
1959年生まれ。大学卒業後、金融機関に勤務。老人ホームの生活指導員を経て、1993年より現職。社会福祉士。

村岡裕(むらおかゆたか)
社会福祉法人依田窪福祉会(上田市)常務理事・法人本部事務局長
1958年大阪生まれ。桃山学院大学社会学部卒業。児童養護施設に勤務後、食品会社工場長、メーカー営業職、自ら立ち上げた木工所の資金調達のための長距 離運転手等様々な職種を経て、特別養護老人ホームともしびの開設に関わる。長野県介護保険審査会委員、長野大学・松本大学等非常勤講師。
>>依田窪福祉会

8件の読者の声 »

30代・女性●何度も泣きました。何度も笑いました。
今、実母は子どもの居ない大叔母(実母の叔母)の介護をしています。もちろん、ヘルパーさんたに助けられながら。この本の様に、少しずつですが叔母の問題行動の理由が分かり始めたみたいです。
我が家にも70代後半の義父母が居ますが、今のところ、元気に畑仕事をしてくれます。これから、もし介護が必要になった時、この本をもう一度読んで挑戦したいと思います。

Comment— 2008 年 4 月 24 日 @ 2:18 PM


50代・女性●7 年程前に事務職を辞め、体力がある内にとヘルパー2級を取得し、その際実習に行った施設でも、本文と同じ様な鍵のかかった部屋に寝たり、テーブルについている様子をまじまじと目のあたりにしました。自分の老後と重ね合わさりショックでした。義母もアルツハイマーでしたが、やさしく接してあげ、童謡など唄っている時など、病気を疑うようでした。幼い子と同じで、管理するのではなく見守ってあげるといいのでは…。昔の教えに「子供叱るな来た道だ。年寄り笑うな行く道だ」。私も常にこの気持ちを忘れずにすごしたいです。

Comment— 2008 年 4 月 24 日 @ 2:20 PM


●突然のメール、失礼とは存じますが貴書が心に響き、感想を申し上げたく送信致しました。
先ずはお詫び。図書館で借りた為、購入していません。
私は現在デイサービスに勤めて3年の35歳男性です。
5人の筆者がパワフルで人間が好きな事が伝わってきました。
エピソードのひとつひとつが愉快で活力に溢れているのが、まるで手で触れているかのようにわかります。
個人的には、信長に切られそうになったおばあちゃんの話には、ニヤリとさせられ印象的でした。
きっと今でも精力的に活動されていらっしゃると思いますが、改正される度に悪くなる介護保険制度に、どの様な印象をお持ちでしょうか。
確かに恵まれていた側面もあるかとは思いますが、現状では、年をとる事に不安を感じます。
介護従事者が報われていない事も不安を増加させています。
高齢者からの「ありがとう」は元気の源ですが、社会的な評価は、待遇・給与共、正当なものではありません。
私の働く施設では、必要な事で残業を行っても時間外勤務にはなりません。
これが特別な事だと思っていたら、複数の同業者から異口同音の話を聞きました。
介護保険制度を決定する人達には、介護の経験者がいないのでしょうか。
後半、愚痴になってしまい失礼しました。
私も、高齢者の皆様から沢山の知恵や発見を頂きましたので、何らかの形でお返ししたいと思っています。
最後に「としょりの気持ち」に携わった全ての方へ、今後のご活躍をお祈り申し上げます。

Comment— 2008 年 4 月 24 日 @ 2:21 PM


●認知症の人に対する勝手な思いこみが、本を読んでから変わりました。あらためて、うそは通じないと思いました。

Comment— 2008 年 4 月 24 日 @ 2:21 PM


男性・40歳●私の父もアルツハイマー型痴呆と診断され、家族としてどのように接したらよいのか困惑しております。書店でこの本を手にして読んでみたところ、これまで気づかないでいた「としょり」の気持ちに接し、これからの生活に役立ちそうです。

Comment— 2008 年 4 月 24 日 @ 2:21 PM


女性・43歳●うなづくことが沢山あり、勉強になりました。

Comment— 2008 年 4 月 24 日 @ 2:22 PM


女性・24歳●ただただ、おもしろかったです。読みやすかったし、とても勉強になりました。2人の施設長が書かれていたところは考えさせられる部分で、施設見学に行ってみたいとも思いました。

Comment— 2008 年 4 月 24 日 @ 2:22 PM


男性・52歳●「ブリコ」で紹介されている本はほとんど読んでいる。街の本屋さんで発見できずにそのままになっていた。エッセイの中に会話者とのやりとりを通じてとしよりの気持ちが解明に映し出されている。

Comment— 2008 年 4 月 24 日 @ 2:22 PM


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