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僕らはみんなキレている


脳からみた現代社会論
篠原菊紀/著

2001年7月25日発刊
四六判・180ページ
本体価格1,429円+税
ISBN4-900918-43-1 C0037

キャラクターデザイン:原田章生
装幀:酒井隆志

品切れ中

 

★著者プロフィール

異常犯罪、不登校、ひきこもり、学級崩壊、ADHD…

親が悪い、社会が悪い、受験地獄の学校が悪い?
犯人探しは簡単だけど、それじゃ何も変わらない。
問題の根っこは「脳」システム。
そいつがわかれば、つきあい方も見えてくる。

現代をとりまく「こころの問題」を、
脳科学のプロが解き明かします。

「発掘あるある大事典」「スパスパ人間学」で
注目のセンセイ

目 次

プロローグ●クイズ「いや~な事件」

第一部●キレているのはなぜなんだ
———————
両手をおでこにあてます。そして左右に開きます。
こめかみの上4センチあたり。
キレているのもそこ。悩んでいるのもそこ。
———————
キレやすさテストに挑戦
小6、中1はキレやすい?!
「こめかみの上」が人らしさを生む
脳の異変はいつから始まった?
キレる脳とオヤジの役割
環境ホルモンが脳を凶暴化する
あなたも注意欠陥障害?
遺伝子がつくる脳の癖
脳は幼児期の「暴走」が育てる
「外遊び」「群れ遊び」がなくなった
「やる気」を生み出すふたつの汁
日本人の子育て戦略

第二部●僕らの「キレ汁」
———————
僕らの脳を覆う「キレ汁」…その「キレ汁」に 寄りそうための物語。
———————
支えを失うノルアドの不幸
集中汁がキレ汁になる
愛の物質セロトニンの物語
赤ちゃんの脳に「じぶん」ができるまで
浜崎、宇多田──ブームの裏にセロトニン
セロトニン系が不安定だと……
他人の喪失「キレ汁」の暴走
「キレ汁」が「ひきこもり汁」へ
「人らしさ」って悪魔的
原因話にはワンクッションおこう
虐待の連鎖も遺伝子で語ろう
脳は一生、変わり続ける
こんな彼でも美しいじゃない
しあわせ汁不足の日本人
自我──身体とこころの勘ちがい
扁桃体がつかさどる愛といじめと計画殺人
親の目が届きすぎるとノルアド過剰に
許しすぎるとドーパミンが暴走する
バランスが崩れたところに
キレるのは親のせいなの?

エピローグ●あしたがあるさ

コラム★ひげおやじ
米を食って「がまん汁」を出すんじゃ/ダメなトップは更迭じゃ/「殺しちゃいけない」はルールじゃ/腰の入れ方をうらむんじゃ/休日は「ガキ大将オヤジ」じゃ/オヤジよ、親子で「やる気汁」じゃ/バナナでハッピーじゃ/ヤーさんとドーパミンの関係/東大法学部よ、しっかりせい/浮気はいかん!/「うつ」には魚じゃ/モーニング娘。じゃ/親の悩みはどうするんじゃ/そんなもん個別にしか対応できん/バカ!/うっせえ!

プロローグ:クイズ「いや~な事件」

「僕らはみんなキレている」──こんな題名を目にすると、平成10年(1998)マスコミを騒がせた「キレる少年」、平成12年(2000)の「17歳の犯罪」、そして昨今のさまざまな事件に関して何かを書いた本に違いない。そう思った方が多いのではないでしょうか?
そのあなたの直感。半分当たっていて、そして半分はずれています。

さて、ここでクイズです。以下の事件はいつ起こった事件でしょうか? 発生年度を当ててください。

高校2年生の女子生徒が行方不明となった。家族へは脅迫電話がかかり、身に付けていたものが送り付けられた。新聞社や警察に「被害女性を絞め殺して×× 高校の屋上の物置に投げ込んだ」「俺は絶対につかまらない」など挑戦的な電話がかかってきた。その電話情報に基づき捜索した結果、遺体が屋上で発見された。9日後、犯人は逮捕されたが、被害者の高校生と同じ学校の1年生だった。少年は女子高生の首を絞めて強姦した後殺害したものだったが、この事件の4ヶ月前にも自転車に乗っていた女性を道路脇に押し倒して強姦殺人をしていた。(      年頃)

高校生が学校の近くで親しかった友人と口論になり、友人の首をナイフで切り落とした。寮生活をしていた二人の仲は外見的にはけっして悪いようには見えなかった。しかし内実は違っており、かばんのなかに虫やカエルを入れられるなど悪ふざけが続いていた。加害者は、決着をつけようとナイフを持参して見せたが、逆に侮辱的な言葉を浴びせられ、その言葉にカッとなり殺害した。殺してから、生き返るのが怖くなり、被害者の首を切断した。(      年頃)

高校2年生の少年は、前年12月に小学6年生を後ろ手に縛り、下半身の一部を切り取り重傷を負わせて以来、十数件の通り魔をはたらいた。本で読んだ外国の連族殺人犯を模倣し、杉並区を中心に東京都区内で小学生男子の顔や首筋に切りつけていた。脅迫状を交番脇にわざと投げ捨てたり、テレビで騒がれるのがうれしくなり、被害者や評論家宅に脅迫状を送り付けたりした。(      年頃)

二人の中学2年生が、自分たちをいじめるリーダー格の少年を殺害する計画でいたところ、日ごろ暴行を受けていたグループの他のメンバーからも当日殴られたため、4人全員を殺害する計画に変更した。4人のうちの一人の家にみんなで泊まったおりに、寝静まるのを待って庭に隠しておいたナイフとハンマーで襲撃した。1名を殺害し、2名に重傷を負わせたが、リーダー格の少年は途中で殺害された少年と寝床を入れ替わったため難を逃れた。犯行を行った2人の少年はおとなしく成績も中程度、そのうち1人はクラス委員を務めていた。(      年頃)

中学2年生の少年は、期末試験の成績やクラブ活動をサボったことを注意されたことに腹を立てて、深夜両親が寝静まった後、母親を金属バットで殴り、目を覚ましバットを取り上げようとした父親を包丁で刺殺し、母親と起きてきた祖母も刺殺した。少年は、アイドル歌手のレイプも計画するとともに、両親殺害計画を友人に話して手伝わせようとしていた。(      年頃)

みなさんの中には、これらの事件に「キレやすい若者」像を重ね、「キレる少年」報道が相次いだ1998年から「17歳犯罪」報道が相次いだ2000年あたりがあやしい、古くても平成に入ってからの事件だろう。そうお考えになった方もいるでしょう。
あるいは、こんなことをわざわざ聞くのだから「ワナ」があるにちがいない。それに事件の中の性や暴力の匂いが妙にストレートで、事件としては「古典的」(古いということではなく典型的ということ)なのではないかとお考えになった方もいるでしょう。

答えは以下です。
1 昭和33年
2 昭和37年
3 昭和39年
4 昭和53年
5 昭和63年     (鮎川潤『少年犯罪』平凡社新書より)

今、見直したら、全部「昭和」、それも戦後になっていますが、「明治」や「大正」でもほぼ同系列の少年犯罪を挙げることは可能です。
さて、僕が一連の17歳犯罪報道に接したときの印象は以下の3つです。

・ ブームが来た。
・ 脳の機能低下や精神病理を疑うのが自然。
・ そうはいっても……。
まず、・のブームが来たについて。
みなさんは、岡田有希子さんの自殺を憶えていますか?
そんなの憶えているだけジジイだと言われそうですが、アイドル歌手であった彼女の自殺を契機に、その後青少年の自殺がブームとなり、ほぼ1年続きました。実はこの流行現象、そう珍しいことではありません。むしろ「自殺は流行する」というのが心理学者の間では常識です。
ヒトは意識的であれ、無意識的であれ自殺願望を持っています。そしてその願望を熟成させる、時代的なあるいは個人的な「何か」があって、心を投影しやすい人(たとえば有名人とか同じ境遇の人)や知り合いの自殺があれば、自殺はブームとなります。傷害や殺人も同様です。ヒトは他者を攻撃し、傷つけたい願望を無意識的に持っています。
別の言い方をしてみましょう。自殺も他者を傷つける行為も、一種の「表現」だと見なします。そうすると、その表現に共感できる心的基盤があれば、誰かの自殺や殺人という表現モデルが引き金となって、その表現様式が容易に流行します。このプロセスは、タイプの似た楽曲が一群となってビッグな流行を形成するプロセスと一緒です。
「ピアノ騒音殺人」「暴走族抗争」「拒食症・過食症」「いじめ」「いじめを苦に自殺」「不登校」「援助交際」「おたく」「多重人格」「アダルト・チルドレン」「キレる少年」「17歳犯罪」「注目を浴びるための殺人」「ひきこもり」「殺しのための殺し」「ストーカー」「ストーカー殺人」「幼児虐待」「出会いサイト殺人」「電車内暴力」「小学校襲撃」……これらはみな、多かれ少なかれブームの影響下にあります。
あの神戸の酒鬼薔薇事件が起こるまでの上半期、少年の殺人での検挙数は戦後最低水準で推移していました(21人)。しかし、事件をきっかけに一気に増え、下半期では50人の検挙者数を数えました。「17歳犯罪」をそのブームの延長と見ることもできます。海外では映画『羊たちの沈黙』のヒットが、その後起こったさまざまな殺人事件の引き金となったことは自明だとされています。そして、楽曲のブームにメディア戦略が不可欠であるように、このブーム形成のひとつのキーはマスメディアです。報道そのものがブームの引き金になります。

次に、・の脳の機能低下や精神病理について。
先ほど挙げた事件の多くは、犯罪精神医学ではけっこう有名な事例です。わけのわからない殺人事件が起こると、その容疑者の多くに精神鑑定が行なわれます。このとき、脳の器質的な障害や機能について検査が行われる場合があります。出題の事件には、前頭葉(おでこのあたりの脳)や側頭葉(耳のあたりの脳)の障害が報告されている事例がいくつかあります。
そうでない事例でも、当時なら分裂病または分裂病圏、今の疾病分類なら、行為障害(酒鬼薔薇君がつけられた障害名)、反抗挑戦性障害、反社会的人格障害(おそらく大阪池田小の事件やレッサーパンダ君)、分裂病などが疑われます。
「17歳犯罪」のひとつに数えられ少年法改正の引き金となったバスジャック事件は、僕にはきわめて典型的な精神障害事例に見えました。15年程前の報道スタンスなら「通り魔殺人」の一種として扱われ、「精神障害者野放し批判」といった論調になった事例だと思いました。ですから、この事件が少年法改正に向かうきっかけになったのには少し違和感がありました。むしろ精神障害による免責規定の見直しに議論が行くのが筋だろう、そう思いました。
そのあたりの議論は置くとしても、あなたは、わけのわからないセンセーショナルな事件に接したら、マスコミの「今の時代が生み出した信じられない事件」といった論調にはとりあえず「まゆつば」しましょう。そして、「その手の事件は、けっこう昔からあった」ととりあえず言い切ってしまいましょう。その方が知的というものです。

そうはいっても、少年犯罪件数が増えつつあるのも事実です。殺人件数は増えていませんが、強盗件数は急増中です。また、脳機能障害や精神病理を疑うにしても、そういう病理が低年齢化している印象をぬぐえません。さらに、その現われ方に時代性を見ることもできます。
たとえば、酒鬼薔薇事件なら、性衝動がストレートに強姦に向かわず解剖の快感に変換されていました。バスジャック事件なら、注目を集め他者を支配することに変換されていました。なんだかんだ言っても若者の事件では、性衝動の影響が強く、春から発生が増し、夏あたりまで続きます。性中枢と攻撃中枢が近くにあって、影響しあうからです。
メディアがいくらブームを作ろうとしても、ブームにならないものはなりません。宇多田ヒカルや浜崎あゆみの楽曲にしても、それがブームたりえるのは、彼女らの詩や楽曲や彼女ら自身の何かが、僕たちのこころを刺激し、僕たちの新たな心象風景を構成できるからであって、そうできないクリエーターは山のようにいますし、そんな楽曲は腐るほどあります。
報道される事件にしても、ブームになる事件とならない事件があります。「なる事件」は、僕らがその事件に驚愕し震撼しつつも、なぜかこころのどこかで了解できる。僕らの理解力のギリギリ端っこ、あるいはほんのちょっと外で起こりつつ、僕らの想像力を刺激し、僕ら自身の見えないこころを垣間見せてくれる。そんな質を持った事件です。
だからこそ、そういう〈こころ〉を集団としてみたときの端っこで、同質の事件が群れをなし生じうるのだと思います。
ブームが生み出されるひとつのキーはマスメディアです。しかし、もうひとつのキーは、生み出されようとするブームが、僕たちの心象風景として見事にはまりこみうる、そういう心的基盤の存在です。

「わたしの子ども、今度中学なんだけど心配」
「うちの子、17歳なんだけど、何かしでかしてもおかしくない気がして……」
「本当によくわからないの、子どもが……」
「わたし自身にも、そんなあやうさがあるかも」

これから僕らが紡ぎ出す物語は、この心的基盤を「脳の物語」として解き明かす試みです。
読後……。あなたは「脳の物語」を鼻で笑います。「脳なんて言ったってさぁ~」と。そして、軽くステップ踏みながら明日に向かいます。
そうなることを願いつつ、物語を紡ぎ始めます。

★著者プロフィール

篠原菊紀
(しのはらきくのり)
別称:ヒゲおやじ

1960年長野県茅野市生まれ。
東京大学、同大学院等を経て、現在、諏訪東京理科大学教授。専門は、脳システム論、健康教育学、精神衛生学。蓼科高原脳トレツアー開発、遊べるパチンコ・パチスロ推進など、脳科学、健康科学の社会応用を目指している。TV、ラジオ、雑誌等での脳関連実験、解説多数。
著書に「60秒活脳体操」(法研)、「ボケない脳をつくる」(集英社)、「僕らはみんなハマってる」(小社)ほか多数。
>>http://higeoyaji.at.webry.info/



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