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『住み継ぐ家の物語 Ⅱ』発刊です!


9784866230061

  • 住み継ぐ家の物語Ⅱ
  • 2009 年発刊のロングセラー『住み継ぐ家の物語』に次ぐ建築家・川上恵一の集大成本!
  • 川上恵一 著
  • デザイン・庄村友里
    撮影・平松マキ/かわかみ建築設計室

  • 2016年11月19日
  • A5判 190ページ
  • ISBN:978ー4ー86623ー006ー1 C0052
  • 1,800 円(税込価格1,944 円)

「そこにある木材や土を使ってそこに住む職人が、その地域しかできない形を作っている。民衆のなかに生きてきたオンリーワンの形を次の時代に繋ぐことが使命であると思っている」

もくじ

特集1 縄文のふるさと「平出」
   平出を代表する江戸時代からの本棟民家【塩原民家】

第一章 風の人 土の人

 建築は風土である
 ●三十年前に手がけた民家を再び【伊藤邸】山梨県北杜市白州町
  建築家のひとりごと【Ⅰ】 [芸術と民芸、美しさときれいの違いについて]
 ●故郷へのUターンを励ましてくれた民家再生【そば処 唐松】 長野県東筑摩郡山形村
 ●松本らしい家を求めてたどりついた建築家【午後の喫茶 くるみ】 長野県松本市
 ●古い蔵に新たな家族の物語が重なっていく【羽賀邸】長野県安曇野市
  建築家のひとりごと【Ⅱ】 [民家は「用」と「美」]
  コラム 丑鼻と鏝絵

第二章 よみがえる家

  建築は時間までもデザインする
 ●築一五〇年の古民家を地元のランドマークに【大雪渓酒造】 長野県北安曇郡池田町

特集2 「再生」という仕事
    ◆民家再生のプロセス……[測量〜解体〜古材の搬出]
  [曳き家]
  [再生では建築家は編曲者]
  ◎吉原民家
  ◎米山民家
  [左官]
  [再生事例]
 ●蔵を再生利用した懐かしく新しい家【志賀邸】 長野県大町市
 ●繭蔵を安曇野から津久井湖畔へ【梶原医院】 神奈川県相模原市

 建築家のブログより
 残った土蔵、残らなかった土蔵/左官仕事あれこれ/お隣りの土蔵にも左官屋さん/諏訪地方の建てぐるみ/父の国・母の国・そして私の国/
 本棟造り民家再生と平成の本棟造り/土蔵の活きバラシ/家具の運び出し

第三章 そして風景になる

 内は自分のもの、外はみんなのもの
 ●若い夫婦が見つけた築百年の安曇野の家【脇本邸】長野県東筑摩郡山形村
 ●緑陰を風がわたる城下町の店舗併用住宅 【和菓子屋 藤むら】 長野県松本市
 ●高遠の風景に溶け込む自然で心地よい医院 【春日医院】長野県伊那市高遠町
 ●老舗旅館をリニューアル。暮らしを楽しむ家へ【青栁邸】 長野県千曲市
 建築家のブログより
 民家村構想/信大授業 須坂、棟割長屋の再生/久しぶりの民家/終の棲家/信州の建築家とは/住まいは誰のもの?

第四章 和であり洋であり

「この国のかたち」とは
 ●絵本に出てくるような洋菓子店【アトリエブレ】 長野県松本市
 ●安全と美しさを兼ね備えた礼拝堂の再生【松本聖十字教会】長野県松本市

ドイツ研修の旅

おわりに


はじめに

 建築設計を職業として四十一年。おかげさまで手がけた建築はいつの間にか400物件を超えた。そして現在も相談をいただき、仕事を続けることができている。お施主さん、工務店、大工をはじめ職人の皆さん……。たくさんの出会いと共にたくさんのことを学ばせて頂いた。好きなことをやりながら家計も支えることができ、子育ても終えた。本当にありがたいことである。
 20代のはじめ、曲がりなりにも学業を終えて社会人となった。大学で建築学を学んだのだから建築のイロハは身についているものだと思い込んでいた。そしてこれからは建築の実務を通して社会に恩返しをするのだと。誰でも通る道であろう。ところが社会に出てから、実は建築の本質など全く理解していないと自覚させられることになる。これではいけないと、ここに至って初めて本当に学ぶことの目的ができた。造り方、材料、技、形の美しさ、新しさ……。自分が無知であることに愕然としながらも、この時点から建築はどうあるべきかという根本的な問題に自問自答する日々が続いた。やがて同じことを毎日、毎日続けて分かってきたことは、建築設計の大切さと面白さ、仕事への責任である。大げさに言えば修行の道である。今は、この道を通して辿り着く仕事の本質とは、幸せの時空を創造することであり、その向こうに景観や生活の豊かさがあり、共に生き甲斐を感じるのだという思いに至っている。でもまだ、それが真の正解かどうかは分からない。
 ところで、この間に社会は大きく変わった。高度経済成長の軽薄短小のモノの時代から、情報とサービスの時代にシフトするとは予想がついたが、これほど短期間で激変するとは想像を超えていた。デジタル技術によって情報は爆発的に増加し、多様な価値観や生活様式が受容され、経済はより複雑化している。しかし何が真実で正解なのか、本当に幸福に向かって進んでいるのか、誰にも理解できないでいる。それを批判しても始まらないし、問い直して正しい道を探し当てることは自分の能力を超える。
 ではどうしたらよいのか。建築に限って将来を考えるだけでも膨大な時間と能力が必要だから、過去に遡ってみる。時代の流れを追えば、限られた資源と情報の中でゆっくりと同じことを繰り返しながら変わってきたことが分かる。循環と進歩の流れである。受け継がれてきた形や技、言葉や習慣、山や川など何気ない景色……。当たり前すぎて忘れがちだが、すべてが宝である。ベストではないにしろオンリーワンのものである。それらを発見し守ることで、間違いのない、この地域にしかないものを志向した新しい時代ができるのだと信じている。
 今は設計職人として、地域のオンリーワンを次の時代へ繋ぐことが使命であると思っている。折り返し地点をはるかに過ぎた。残った人生、正しいと信じてやってきた仕事を続けるしかない。独り言にしかならないが、とにかくここに載せた拙文やら仕事に目を通してもらって、少しでも建築のあり方を考えて頂く機会になれば幸いである。

平成二十八年十一月

川上 恵一


川上恵一 profile

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1952 年長野県塩尻市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒。北野建設㈱、㈱降幡建築設計事務所を経て、1993年㈲かわかみ建築設計室設立。早稲田大学創造理工学部建築学科非常勤講師、信州大学工学部建築学科特任教授、日本建築家協会関東甲信越支部保存問題委員長、日本建築家協会長野県クラブ代表などを歴任。
[所属団体]
日本建築学会、日本建築家協会、長野県建築士事務所協会、長野県建築士会、日本民家再生協会、長野県民藝協会
[主な賞歴]
2001 年「ナワテ通り商店街」で国土交通省手づくり郷土賞、2007年「山形村の民家再生」で日本建築家協会優秀建築選2011 選出、2011 年「午後の喫茶くるみ」で松本市都市景観賞、ほか受賞多数。

かわかみ建築設計室
〒390-0874 松本市大手5-1-3(旧松岡医院)
Tel 0263-33-8200 Fax 0263-33-6582
http://www.kawakami.org/

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