女の机


小林登美枝/著

装幀:酒井隆志

読者の声
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2004年1月26日発刊
四六判上製・320ページ
本体価格1,800円+税(税込1,944円)
ISBN4-900918-64-4 C0095



★著者プロフィール

未知の21世紀にどんな風が吹こうとも、信濃の友よ、胸を張って進んでいただきたい。

(連載最終回:2000年12月31日より)
戦争体験者がだれ一人居なくなるときがきても、
戦争とはなんであったのかということを語り問いただす、
反戦・平和の志は、その灯をつたえていかなければならない。
そしてそのことは、永遠の命をつなぐ女性が、天から託された役割でもあると思う。

◇本書は、著者が信濃毎日新聞に1959年~2000年12月31日に連載したコラム「女の机」の、1986年1月4日以降1,195篇のなかから128篇を選出し、時系列に沿って編集したものです。(同コラムの前半部分は信濃毎日新聞社より『信濃の友へ』と題し出版)
◇秘蔵アルバムから貴重な写真も掲載。

目 次

序に代えて──45年目の女の机

●1986年〈昭和61年〉
女が集まるのに都合よい日は……
オシャレ心の喪失
「主人」から「粗大ゴミ」になる日
わが春怨の嘆き
〈身を立て 名をあげ〉と歌った卒業式
私利私欲をすてた先人の教え
女と男のパートナーシップとは
ボーボワール女史の思い出
辻潤と宮沢賢治 ── 響き合う魂
現代女子大生気質
農村女性の手が訴えるもの
21世紀を生きる女たちの〈らいてう百年歳〉
メダカの自立する日は
桐生悠々が唱えた民主主義の正論
教科書にみる日本人の恥ずかしい歴史観
自分をムチ打つ8月15日のスクラップ帳
中曽根総理大臣の女性観

●1987年〈昭和62年〉
〈女時〉は男性優位社会の差別用語
友情こもる見舞いの小箱
非民主的な国家秘密法に反対する
新憲法なくして、今日はなし
男の料理と安全な食卓を考える
戦争の悲惨さをわがものとして受けとめよ!
『サラダ記念日』現象と与謝野晶子
人間無視きわまる医療ミス
「問答無用」のテロは弾圧時代の前ぶれ
まず、稲をして語らしめよ
政権党よ、おごるなかれ
「女の机」って本当はボロのすわり机なの

●1988年〈昭和63年〉
宇野重吉さんに貸した三十銭
心の記念日をわが胸に
イジワルばあさんになってきたナ
「日本国憲法」のもとに真の愛国者が団結する日
「ワタシの下着はシャネルの五番よ……」
梅雨時は香をたいて心鎮める
静かな時間のなかで日本の近代を思う
有料福祉の前に実現すべきことがある
なぜ戦争体験を語り継ぐのか
平和運動に取り組む女たち
それでも種をまく?
関心よぶ夫婦別姓法制化
大みそかの卵

●1989年〈平成1年〉
身につまされた映画「八月の鯨」
わが「昭和 」をふり返る
大岡昇平のデスマスクにみたもの
雨戸をしめる薄明のひととき
ちまたに雨のふるごとく……
与謝野晶子が消え東郷元帥が浮上する日
四十二年目の憲法が泣いて怒っている
着物は気力によって着るもの
退場せよ! 宇野宗佑総理大臣
このガキたちの親の顔が見たい!!
冬の旅で聴いたひばりの歌
国家統制下の女子教育の本質を示す一書
青い空にもろ手をさしのべた〈8・15〉
肌身をよせあい老いを知る
秋扇に過ぎさりし日を思う
流れやまない涙の思い出
もくせいの花の匂う季節に

●1990年〈平成2年〉
民主主義に向けられた銃口
料理の品数を誇る飽食日本に異議あり!
いま、なぜ日の丸の押しつけなのか
心の愁い包みこむこぶしの花
生き続けるグレタ・ガルボの神秘
胸が熱くなる二冊の女性史
遊びをせんとや生まれけむ
丸岡秀子先生との夜のホットライン
宣戦布告の権利を母親たちに
虚心にして謙虚にふり返れこの百年

●1991年〈平成3年〉
時代をひらく子どもたちの反戦デモ
湾岸戦争と日本の女性たち
春を呼ぶ梅の花にありがとう
〈男との別れも愉し〉の女心
わが心の原風景にある八月
「嫉妬」という字のおかしさ
一人で思う秋の夜のひととき

●1992年〈平成4年〉
発見された従軍慰安対策の公文書
危機感をもって考える憲法の重さ
審議尽くしたか? PKO法案
伸びきれなかった昔の女の脚
何かを秘めたまま消えた二人
戦争の語り部、いつまでも
PKO隊員が避妊具を携行?
雪国に見た婦人たちの情熱に涙する

●1993年〈平成5年〉
わが心のオードリー・ヘプバーンよ
「女の机」三十四年に思う
住民の公開請求のたまもの
八月に抱く熱い感情の塊
一日一杯のコーヒーを楽しむ
枯れ葉のメッセージ
旧姓使用の驚くべき後ろ向き判決
憲法九条は最高の贈り物

●1994年〈平成6年〉
「産後の猫」の哀しみと詩情
風薫る朝の美しき客人
胸はって〈わたしは わたしらしく〉を生きる
「従軍慰安婦」という勝手な呼称
大つごもりの朝にふり返る時代の後ろ姿

●1995年〈平成7年〉
人生の現場を自分の目で見ること
女は憲法を論議する
秘すれば花、秘せねば花なるべからず
人類の悲願達成のために
バツイチの女たちよ!

●1996年〈平成8年〉
ひとの胸を借りたいこと
女の平和の意志と日本国憲法
「の付きの女」って知ってますか?
心の扉ひらく宮沢賢治のよび声
「憲法公布」五十周年に思う

●1997年〈平成9年〉
自己の寿命を生ききること
「紀元ニ六五七年」に歴史の真実を見よ
杉村春子さんとの思い出
最期の輝きのための一書
戦争絶滅こそ真の鎮魂である

●1998年〈平成10年〉
運命共同体の地球人たちよ
信州に住み替えたくなった美しい本
「元始、女性は太陽──」の碑建つ
自立する女性の典型だった佐多稲子さん
ウチナンチューの光る一冊『那覇女性史』

●1999年〈平成11年〉
現役女性運助家・櫛田ふきさんの百歳を祝う
自他の老いに向き合うとき
消えてゆく花に惜別の思い
トシを重ねながら「うつくしくなる」
消えぬ炎暑の八月の記憶
「いのち」をテーマに行動する宗教家

●2000年〈平成12年〉
男性のコピーになるなかれ
愛犬にべったりだった在りし日の父
「親になる」ことが、いつから難しくなったのか
「沖縄の心」たくした展覧会
信濃の友との四十二年の絆

[あとがきに代えて/オフィスエム・寺島純子]
らいてう先生から登美枝先生へ。そしてこれからの人たちへ。

(序に代えて)四十五年目の女の机

(1959年9月8日付『信濃毎日新聞』より)

空を流れる雲のたたずまいにも灯火したしむべき秋の気配が感じられる。秋の夜ながを過ごす女の姿もさまざまであろう。
日本の住居というのは、フスマや障子一枚のあけ立てで、まことに開放的にできている。カギがなければ暮らせない西洋の住居とちがって、夫婦の寝室すら、通行自在というばあいもおおい。カギはなくとも、家族それぞれに独立した部屋をもつというのは、一部の生活層にかぎられていて、朝から晩まで家族がごったに暮らしている。
住宅事情のせいばかりでなく、広い農家のばあいでも、ひと間に集まって寝るまでの時間を過ごしている。自分ひとりの空間と時間をもつのは、極端にいえば便所の中だけということにもなりかねない。こんな暮らしの中で、物を考える習慣、本を読む興味は薄れて、散漫な落ちつきのない時間を追うことが、主婦の習性となってゆく。
家族のおおい農家の主婦ばかりでなく、勤め人の家庭でも、主婦の時間の過ごし方は、似かよっている。自分の思念に集中できる時間も空間もない。夫は、書斎や机をもっていても、妻の机というものがある家庭はすくないものだ。
そこで、灯火したしむべきシーズンをむかえて、ぜひ提案したいことは、主婦が机をもつことである。独立した部屋の余裕がないなら、せめて主婦の机を置くコーナーがほしい。
手紙を書くにも何をするにも、ちゃぶ台で間にあわせてきたのとはまったく気分が違う。自分の机の上の、ほんのわずかな空間が、どれだけ豊かな考えをひき出すかわからないのだ。
遠心的な主婦の一日の動きを、グッと球心的にひきしめる一点、主婦の机がぜひほしい。嫁入り道具の中にも、机がかぞえられるようにしたいものだ。主婦の城は、台所だけではない。あたり前の主婦が、自分の机を持ったとて、なんの不都合があるだろうか。

★著者プロフィール

小林登美枝(こばやしとみえ)

評論家(女性史・婦人問題研究)
1916年、茨城県に生まれる。茨城県立土浦高等女学校卒業。大阪時事新報記者から毎日新聞記者を経て、日本婦人団体連合会の常任理事となり、女性解放運 動に関わる。女性解放運動の先駆者平塚らいてうの研究者として自叙伝の編纂、著作に関わる。小県郡真田町に記念館建設を準備しているNPO法人「平塚らい てうの会」会長。1959年から2000年12月まで42年間にわたり信濃毎日新聞のくらし・家庭欄に「女の机」を連載。
2004年1月11日、リンパ節がんのため東京都内のホスピスにて死去、享年87。
主な編著書に、『陽のかがやき平塚らいてう・その戦後』新日本出版社、『信濃の友へコラム「女の机」28年』信濃毎日新聞社、『平塚らいてう評論集』岩波 文庫、『平塚雷鳥』岩波書店、『平塚らいてう』清水書院、『愛と自立紫琴・らいてう・百合子を語る』(共著)、『平塚らいてう愛と反逆の青春』大月書店な ど。
ホスピスからの言葉、取材記事等が収録された『21世紀へつなぐ言葉』はドメス出版へ。
千枝子先生の恋文
戦時下をかけ抜けた女教師の愛

岡部千枝子/著
序文:小林登美枝
国民学校の女性教師がまだ見ぬ外地の軍人へ綴った44通の恋文。小林登美枝氏「序──同時代人として」を収録。


敗戦後第1回のメーデーに密着取材/1946年



時事通信社の座談会「これまでの女、これからの女」に毎日新聞記者として出席。左から司会の羽仁節子、平塚らいてう、歌人の柳原白蓮、著者/1948年



デンマーク・コペンハーゲンにて/1995年



映画「平塚らいてうの生涯」の制作発表会。左から高野悦子さん、青木生子さん、羽田澄子さん、著者/1999年



夫と/2000年

 

★書評・紹介記事

北海道新聞
2004年10月31日ほん/地方・小出版/長野

女の机 小林登美枝著

1916 年生(大正5年)まれの著者は、戦時中は数少ない女性新聞記者の1人だった。戦後は女性解放運動にかかわり、平塚らいてうの評伝など多くの編著書を発表し てきた。本書は「女の机」という信濃毎日新聞に連載された128編のコラム(1986-2000年)をまとめたもの。
「自分をムチ打つ8月15日のスクラップ帳」「憲法九条は最高の贈り物」「丸岡秀子先生との夜のホットライン」「『嫉妬(しっと)』という字のおかし さ」「『サラダ記念日』現象と与謝野晶子」一、これらの題名に何となく著者の哲学と生きた時代の証しのようなものが見えてくる。「ローマの休日」のオード リーをまねてみようと思ったが、ダイコン足なのでやめたといった笑える文章も点在。美しい日本語と四季の自然美にも出合える稀有(けう)な本だ。(澄)


信濃毎日新聞
2004年2月1日

故・小林登美枝さんの本紙連載コラム「女の机」本に
1986-2000年掲載の128編/貫く反戦・平和への願い

女性史研究家で、一月死去した小林登美枝さん=写真=が本紙くらし・家庭欄に連載したコラム「女の机」のうち、一九八六年から二〇〇〇年に掲載した百二十八編をまとめ、このほど「女の机」(オフィスエム)として出版された。
小林さんは終戦前後に新聞記者として活躍。その後は平塚らいてうを中心に女性史研究家として活動する傍ら、五九年から二〇〇〇年まで四十二年にわたって 「女の机」を執筆した。今回は八六年に出版した「信濃の友ヘコラム『女の机』28年」以降に掲載した約二千編から編集した。
「自分をムチ打つ八月十五日のスクラップ帳」(八六年)
「四十二年目の憲法が泣いて怒っている」(八九年)
「戦争絶滅こそ真の鎮魂である」(九七年)
コラムを貫く大きな一つの柱が反戦・平和への願いだ。旧憲法下で女性が強いられてきた理不尽な生き方を体験し、戦前戦後の激動期を記者という立場で見て きた小林さんは、憲法を守ることの大切さを訴えた。「八月」にこだわり続け、戦争を語り継ぐことの大切さを身をもって示した。
さらに、夫婦別姓、パートナーとの関係など、女性の社会的な地位向上にも目配りし、世の中の理不尽なことに対して、女性の立場からのNOを訴えた小林さ ん。理屈ではなく、日々の暮らし、生き方の中から生まれてきた切実な声だけに強さがある。半面、がちがちな主張ばかりでなく、ユーモアもおしゃれ心も欠か さないところが、県内に多くのファンを持つ小林さん.の人柄をしのばせる。最後の「女の机」では「未知の二十一世紀にどんな風が吹こうとも、信濃の友よ、 胸を張って進んでいただきたい」と書いた。今となっては、遺言のように心に残る。
オフィスエムの編集者が編集を始めた時、小林さんは末期がんで東京都内のホスピスにいた。本の完成を待ちながらも、小林さんは一月十一日に死去。小林さんの希望で「古代紫」を表紙や本の装丁に使った。定価一八○○円。


婦民新聞
婦人民主クラブ(再建)発行
2004年3月20・30日合併号_紹介したい本

女の机 小林登美枝著

一九五九年から四十二年間、著者が信濃毎日新聞に建載したコラム「女の机」後半(一九八六年~二〇〇〇年)から選び抜かれた百二十八編を収録。新聞記者(毎日新聞)らしい鋭い切り口ながら、ユーモアあり皮肉あり、辛らつさもたっぷりあって、読めば元気の出る本です。
小林さんは一九四六年、憲法草案が国会で審議されていた時、記者としてその場に居合わせ、その後一書して反戦平和のメッセージを発し続け、今年一月、八十七歳で亡くなられました。平塚らいてうの会会長、婦人民主クラブ創設のよびかけ人の一人。
女は戦争を許さない。第九条は絶対に手離さない。著者の渾身のメッセージが聞こえます。その年その時の物語を時代のキーワードに盛り込んで年代順に編集 されており、忘れていた過去を思い起こさせ、あらためてこの二十年の政治の荒廃の構図に思い至ります。再びファシズムに向かわせないために、歴史をつかむ 大切さを説きながら、一方では「トシを重ねながら美しく生きる」という項もあるのです。ぜひご一読を。(たかね)

1件の読者の声 »

女性・85歳●とてもすばらしく、感動しました。著者(小林登美枝さん)にもっと長生きをして、日本の行く末を見極めてほしかったと思います。今この国の在り方が、何か危い方向に動いて行きそうな気配を感じて心配ですから。

男性・55歳●行間にまであふれる思いと凛とした人柄が、真っすぐに私たちの胸に迫ります。そして、ググッと勇気が心の中にひろがってきます。
 イラクへ日本の軍隊が参戦し、本格的に「日本の国の形」が変えられ、有事法制の総仕上げである国民保護法が閣議で了解された。憲法改悪が具体的な日程にのぼりつつある中、論旨明快で歯切れよい文章は、読者の心のツボを押さえ、時にいさぎよく、時にベランメイに、女の眼から見たあるべき人の姿を示している。編集長の「ぜひ男にこそ読んでもらいたい」との思いは、労働運動の片スミで小さな新聞づくりにかかわる私にとっても共有できるもので、読後感はその思いをさらに増幅して余りある読みごたえでした。

Comment— 2008 年 9 月 16 日 @ 5:41 PM


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