信州大学山岳科学総合研究所
鈴木啓助 信州大学山岳科学総合研究所長
本体価格933円(税込価格980円)
地球温暖化とは何か?その仕組みと環境の変動を雪と氷から読み解く
2009年11月1日発行
ISBN978-4-904570-12-8 C0044
A5判88ページ
山岳を人文や科学など様々な分野から考察する山岳科学ブックレットシリーズの第2弾です
水の惑星「地球」
大気圏は地球に掛けられた布団
地球の温度を調節する「大気と海の大循環」
二酸化炭素濃度と気温の関係
解説1 雪や雨ができる機構 氷晶過程と暖かい雨
解説2 地球、金星、火星の温度を決めている条件
「南極の氷が海に戻る」ことは自然の摂理
中低緯度地域の氷河の後退
南極での気温変動
北半球と南半球における様々な違い
ミランコビッチサイクルと気候変動
氷コアに刻まれた記録
信州の気温・降水量の地域的な差
上雪(里雪)と下雪(山雪)
信州各地の積雪量の経年変動
「クジラ図」が示す積雪深と気温の関係
貴重な水資源・天然ダムとしての雪の役割
山岳地域での調査研究はこれから
あとがきにかえて 私が山や雪のことを研究することになったわけ 80
「雪は天から送られた手紙である」これは中谷宇吉郎先生の言葉です。
中谷先生は実験室で雪の結晶を作ることに、世界で初めて成功しました。温度と水蒸気の量を変えることによって、成長する雪の結晶形が異なることを明らかにし、温度を横軸、水蒸気量を縦軸に取ったグラフに、それぞれの値に対応する雪結晶を示した「中谷ダイアグラム」を完成させました。これがあれば、雪の結晶形から雪が成長した雲の温度と水蒸気量を知ることができます。まさに、雪は天からの情報を記録して降ってくる手紙なのです。また、中谷先生は数々の実験や天然雪の観測の話を、岩波新書赤版の創刊20冊の1冊である『雪』の中で丁寧に説明されました。私は、この『雪』に高校生の時に巡り会ったことがきっかけで雪を研究することになります。
朝日連峰、奥羽山脈、月山などに囲まれた山形県の盆地で生まれた私は、小さい時から山で遊んでいました。山と雪には子供の頃から慣れ親しんだだけではなく、厳しい面も体感しながら育ち、今、その山と雪を対象としながら仕事ができる幸せに、あらためて感謝しなければならないと思っています。
さて、表紙の写真は、冬の北アルプスです。松本と札幌を結ぶ定期便の航空機から撮った写真です。山の上の方には白く雪が積もっています。雪は冬の北アルプスらしさを表現するのに無くてはならないものです。
しかし、「地球温暖化によって暖かくなると山に雪が降らなくなるのではないか」と現在、各方面で心配されています。それは本当なのでしょうか。
また、最近では自然現象に変化が見られると、「地球温暖化の影響」として安易に片付けられることも多いように感じられます。それほど単純な話ではないのですが、それだけ地球環境に対する関心が高くなっているとも考えられます。
本書では、初めに地球温暖化のしくみを説明してから、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次レポートのこと、中低緯度地域の氷河の縮小の問題、過去の大気環境情報が保存されている南極氷床のことなどを解説し、最後に、信州の冬の気候や雪のことを考えてみましょう。
雪や氷にとって、現在の地球上の気温では、氷点下といえども、融けてしまう寸前の高い温度なのです。雪や氷にとっても、地球温暖化はとても切実な問題です。雪や氷の世界から届いた地球温暖化の話を、一緒に読み解きましょう。
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信州大学山岳科学総合研究所長。
1954年山形県生まれ。北海道大学理学部卒業、同大学大学院博士課程修了。
東京都立大学助手を経て1996年より信州大学理学部助教授、2002年より教授。
専門は水文学、雪氷学、山岳環境学
山岳地域は、陸上に残された数少ない貴重な自然資源であると同時に、地球規模での環境変動の影響を受けやすい脆弱な自然でもあります。標高が高いために森林の無い高山域から人々の生活が営まれる里地・里山にいたるまでの、山岳地域と呼ばれるこの環境系は、地球規模での環境変動の影響はもとより、人間の生活系との相互作用によっても変化しやすい地域です。2006年7月に再出発した際に掲げられた信州大学山岳科学総合研究所の基本理念は、「今後100年間の近未来を見据えた、山岳地域の自然環境と人間活動との持続的な融合の方策を探る」ということです。
この理念を実現するために、先ず、山岳地域での環境問題の根幹をなす、「物質循環機構およびその動態」、「地表変動および災害発生機構」、「生物多様性および多種共存機構」について地球生物圏科学の視点からきめ細かく解析します。次いで、ここで明らかになったことを基礎として、「山岳地域に暮らす人々にどのように影響するのか」、「人々はどのように山岳地帯と関わっていくことが望ましいのか」を、森林、里山、都市をひとつの環境系として位置づけながら研究していきます。
そして、最終的には、人間を含む生命系の永続的な維持をめざして、大気・大地・生命の有機複合的な自然環境の躍動性を明らかにし、自然環境再生・保全・活用および防災を実践する事のできる「山岳地域の自然環境と人間活動との持続的な融合の方策」の提言を行います。
これらの研究作業の営みの中で、明らかになったこと、問い掛けてみたいこと、提案したいこと、議論したいことが数多く出てきます。それらの思いを皆様に分かり易くお届けする機会として、山岳科学ブックレットを刊行することとしました。山岳科学はとても広い領域を対象としています。ブックレットも多種多様な題目で次々と刊行されることになるでしょう。是非、肩肘張らずにお読み頂き、皆様と一緒に「山・ひと・くらし」について考えることができれば幸いです。
信州大学山岳科学総合研究所長 鈴木啓助
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