電通にかかわるコラムを長野市民新聞(2019年7月2日)に書いたので、ここに転載します。

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闇営業

吉本興業のお笑い芸人が「闇営業」をして、会社から無期限謹慎の処分を受けたという。「闇営業」とは「事務所に所属する芸人が、事務所を通さずに行う営業」を意味する業界用語らしい。つまり、雇い主の会社には見えない。だから「闇」と呼ぶわけだろう。

日本のお笑い業界に君臨するのが吉本興業ならば、広告業界に君臨するのは電通である。売上高が1兆円を突破する企業で。テレビCMや新聞広告、イベントなど、広告業務を幅広く手掛けている。「原発の安全神話」の流布を中心で担ったのも電通だといわれる。

ぼくはここ1年くらい、電通について調べている。福島第一原発事故に関わって、「風評被害」払拭や復興PRのために、事故後の8年間、電通がどのような事業を国や福島県から委託されてきたのか、について。情報公開によって、契約書などを開示した。その結果、電通への委託事業費は240億円を超え、事業数は120にのぼった。ここから、3・11後の国の原子力政策が垣間見えてくる。事業費が突出していたのは、タレントのTOKIOを起用した風評払拭キャンペーンだった。

さて、120の事業の中に、吉本芸人が出演するものがあった。「ふくしまスマイルキャラバン」という子ども向けの、2013年度の福島県の事業だ。「様々なストレスや制限を受けて生活を送っている子どもたちへ、心を癒し楽しめる機会を提供する」というのが事業目的。福島県内7会場で各々10日間の展示会を行い、そこに吉本芸人のステージ日がある。1日に2時間のステージで、7会場をトータルすれば14時間となる。

この事業の決算書も情報開示された。事業費は税抜約4000万円。そのうちの吉本芸人出演料はまとめて1000万円也! 吉本の公式な営業だ。

4000万円の事業費は120の中では小額の方だ。他の事業では、いったいどんなお金の使われ方をしているのか? 国の事業についても決算書をいくつか開示した。すると、使い道のわかる金額はすべて黒塗りだったのだ。非開示の理由は、「公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり」とある。

ちょっと待て。240億円は血税なのである。それにもかかわらず企業利益優先で、納税者には何も見えないのだ。国民にとっては、これこそ「闇営業」ではないか、と言いたくなる。 (野池元基)

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国の事業の決算書の黒塗りについては、以下を参考にしていただきたい。

放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会のホームページの

環境省ヒアリング④まるで電通支配下?口を閉ざす環境省」(2019/06/28)


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48号の特集の1本が電通。行政の情報開示資料をもとに記事を書きました。今回は、マスコミとの熱い関係。記事は、「安全神話」復活へ、国の行政機関などから電通に240億円・120事業/野池元基(本誌編集長)

以下は、福島県が電通に委託した「新生!ふくしまの恵み発信事業」(2013年度)のメディアPRの年間スケジュール表の一部です。事業費は12億6210万円。

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さて、この電通事業の情報開示によって何が明らかになったのか。WEBサイトで、小誌の取り組みを記事で紹介していただきました。ぜひご覧ください。

アワープラネットTV 2019/05/24  原発事故後の復興PRに240億円~電通1社で 

リテラ  2019.05.31  福島原発事故“風評被害対策”で「電通」に240億円! ママインフルエンサーのステマ、開沼博や早野龍伍、TOKIO起用も

本誌48号の記事は、この二つの記事とも重なりますが、新しい資料も使っています。次号以降も、引き続き本特集を組んでいきます。


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『たぁくらたぁ』48号を6月28日に発行いたしました。目次は以下をご覧ください。

http://o-emu.net/tarkuratar/

表紙作品♦山口マオ(やまぐち まお)


2019年3月22日発売の週刊金曜日に「電通と被曝安全神話 情報公開でわかった! 「心の除染」のつくり方」という記事を書きました。3・11以後、日本最大の広告代理店である電通が東京電力福島第一原発事故にかかわってどのような事業を行ってきたのか、福島県伊達市から委託を受けて実施した「心の除染」事業を中心にしてまとめたものです。

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また、この記事については、「編集長後記」で紹介していただきました。記事を読んでない方には要旨が分かっていただけるでしょうから、そのまま掲載させていただきます。以下のとおりです。

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環境省の「2012年度 東日本大震災に係る除染等に関する広報業務」について、記事の中で触れました。それに合わせて、この事業の事務局体制の図(開示された報告書にある)を紹介したかったのですが、スペースがなくて掲載することができませんでした。まるで原子力ムラが運営しているかのようであることが、わかっていただけるのではないでしょうか。

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なお、「心の除染」事業については、『たぁくらたぁ』47号により詳しく書いているので、そちらの記事も読んでいただきたいのです。47号に掲載した小出裕章さんのインタビュー記事や伊達市在住の島明美さんの記事を併せて読んでいただければ、「被ばく安全神話」がどのようにつくられているのか、きっとご理解いただけると思います。このブログの2018年2月18日の記事も参考にしてください。

(野池元基)


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『たぁくらたぁ』47号を2月25日に発行いたしました。目次は以下をご覧ください。

http://o-emu.net/tarkuratar/

表紙作品♦山口マオ(やまぐち まお)


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『たぁくらたぁ』46号を10月30日に発行したあました。目次は以下をご覧ください。

http://o-emu.net/tarkuratar/

表紙作品♦伊藤瞳(いとう ひとみ)

 


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『たぁくらたぁ』45号を6月15日に発行したあました。目次は以下をご覧ください。

http://o-emu.net/tarkuratar/

表紙作品♦小池輝人(こいけ あきと)2003年生まれ 上高井郡在住

『木』——学校の勉強も飽きて、暇にまかせて点々をうっているうちにこんな点描画ができた。「なんとなく、適当に、時々」描いているんだそうな。信州ザワメキアート展2017入選。【関 孝之/ながのアートミーティング】


お知らせです。表記の講演会を4月1日(日)に長野市の ふれあい福祉センターにて行います。ぜひご参加ください。

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当日は、今野さんの講演を1時間、後半の1時間は渡辺一枝さんに加わっていただき、会場からの質問を受けながらトークを進めていきます。 会場とのやり取りにたっぷり時間をとってあるので、普段から気になっていることやお知りになりたいことなどを、この機会に今野さんと渡辺さんにぜひご質問ください。

今野さんのプロフィールを補足しておきます。

1982年、放射線作業従事者となり原子力関連(東電福島第一・第二・東北電女川・原電東海第一・第二、JAEAもんじゅ、他)や、火力関係(東電広野、鹿島、他)などで電気計装設備及び機器に関する建設工事、メンテナンスなどに従事して来た。2011年3月女川に出張中に被災し、現地で復旧支援活動に当たった後、家族や浪江の人たちと共に福島市の飯坂温泉の公営住宅に避難。「子ども脱被ばく裁判(子ども人権裁判)(親子裁判)」原告。「脱被ばく実現ネット」で活動。「福島原発告訴団」「南相馬20mSv撤回訴訟」「津島訴訟」「生業裁判」などの支援者として活動。 

また、講演会終了後に交流会(懇親会ではなく)を予定しています。参加費は実費(たぶん1000円くらい)です。 当日の申し込みで結構です。開始時間は16時から、場所は会場のすぐ近くで、『たぁくらたぁ』発行元のオフィスエムのビルの4階です。

 


伊達市の市役所本庁舎は東電福島第一原発から北西約60キロに位置する。2011年3月18日、福島県による伊達市内の空間放射線量の調査が始まり、22時20分、庁舎敷地内で毎時7.35マイクロシーベルトが記録された。『たぁくらたぁ』の取材で今年1月に話をうかがった島明美さんの自宅は、この庁舎から500メートルほどの住宅地にある。

2011年7月、伊達市は除染事業の概要をまとめ、国や県の対応を待たずに「除染は市内全域を行う。宅地・住居を最優先する」という基本方針を示した。しかし、1年後の8月、市は大きく方針を転換した。除染計画の2版をつくり、被ばく線量が年間1~5ミリシーベルトの地域(Cエリアと区分)は「除染の必要なし」としたのだ。Cエリアは、市全域の3分の2の面積にあたる。市役所も島さんの家のある住居地区もCエリアである。島さんは自宅の庭の除染を自分でし、除染土は2年間も庭に積んだままにせざるを得なかった。

なぜ伊達市は方針を変えたのか、その間に何があったのか。「当事者性」に立って市政と向かい合ってきた 島さんの記事が、その経過を伝えている。

 shimasan1.jpg除染のために防護服を着る(2014年)

jyosen.jpg自宅に保管した除染土(2014年)

市の除染計画によって、安全が確保されたと心から信じた市民がどれほどいただろうか。2014年1月の伊達市長選で、市長は「追加除染」を公約に加えて当選した。しかし、「追加除染」とは放射性物質を取り除くのではなく、すでに安全であるにもかかわらず危ないと思う市民のその不安を取り除く、つまり「心の除染」である、と当選後に市長は説明したのだった。

放射能汚染の危険性は今も日常生活のなかにあり続けていると、島さんは考えている。たとえば、マスクをするかしないか、の話である。 市民が着用していたマスクからセシウムが検出されたという調査報告を例に引いて、「原発事故の当時も今もですが、子どもたちはマスクをずっとしてますが…やはりぞっとします。そしてマスクを外させようとした学校側の対応に今更ながら表しようもない怒りを覚えます」と言う。

これについては次のような経緯がある。東京大学アイソトープ総合センターの助教の2012年の調査で、マスクからそこに付着したスギ花粉に含まれたセシウムが検出された。助教は研究グループとして調査を続行、2014年の調査でもセシウムが検出、加えてこの時には、セシウムボール(原発事故の時に大気中に放出された、放射性セシウムがガラスと混じり合った微小な球状の粒子)も見つかったという。さらに2016年10月には、福島県において住家内で着用されたマスクからセシウムホールが発見された。

島さんはさらに指摘する。セシウムボールと呼ばれているが、「違う放射性核種もあるのです。例えばそれはプルトニウムです。現在も国内外からの研究者がエアサンプラーなどで集めたチリなどから、それを探しているというのが実情です」 。しかも、こうした調査の結果が公表さるのは、1年先2年先ではないか、まるで後出しジャンケンのようだ、とも。

shinbun.jpg (茨城新聞 2018年1月14日)

 こうした現実を、「「科学的には安全だ」と言っても、それが市民の心の安心に繋がっていないという現実」(伊達市長メッセージ 2014年4月24日)という一言で片付けることができるだろうか。心のの安心を目指すのが「心の除染」だった。なお、「心の除染」にはちゃんとした正式事業名がついている。「低線量地域詳細モニタリング事業」(2014年度)。これを請け負ったのは天下の電通だった。

島さんの闘いに終わりはまだ見えない。


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『たぁくらたぁ』44号が2月15日発行になりました。目次は以下をご覧ください。

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表紙作品♦宮本尚幸(須坂市)

三好達治の詩『雪』——「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ」。作者独自の筆の走らせ方で書く。雪がシンシンと降り続ける風景。安心して眠る太郎と次郎。【関 孝之】


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