関口鉄夫


火山噴火で、火山灰や火山礫と一緒に黒いスコリアと呼ぶ塊状の多孔質の噴出物が噴出することがある。玄武岩質のマグマから揮発成分が発泡してできたもので、火砕流として斜面を流れ下って火山体を形づくったりもする。

火砕流として斜面を流れ下った阿蘇山のスコリア層が、終息の気配すら見せぬ熊本地震の被災地で、斜面崩壊という深刻な災害を引き起こすことが怖れられている。多発する激しい地震は大地に無数のひび割れをつくり出し、大地のひびから浸透する雨水がスコリア層ごと斜面を流れ下る可能性が高いからだ。

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ところで、環境省は栃木県の指定廃棄物の処理施設の候補地として同県塩谷町寺島入地区を指定した。

かつて、町の指定廃棄物対策班の担当者から手渡された地形図を見て、私は、候補地全体の急峻な地形に比べ、国が候補地したエリアに向かって舌状の緩やかな斜面が形成されていることが気になった。舌状の地形は沢を押し曲げている。あらかじめ予想していたことではあったが、現地に立ってはっきりしたことがあった。この舌状の地形はスコリア質の火砕流がつくりだした地形だった。スコリア層の上には、直径数十センチの礫を含む土石流も乗っていた。

火砕流と土石流が沢を押し曲げている地形の末端が指定廃棄物処理施設の候補地なのだ。候補地は舌状の崩壊性の地盤の裾にある。裾を切れば上からスコリアが動き出す。

しかも、平成27年9月10日の降雨では沢の濁流が候補地に冠水した。こんな土地が指定廃棄物処理施設の安全な候補地であるはずはない。

熊本では大規模な斜面崩壊による災害が危惧されるスコリア層が、栃木では問題のない地質と評価されたのだ。

候補地と決定した栃木県の「有識者」とはどんな方たちなのだろう。候補地選定の理由より、私は彼らの生き方の方が気になって仕方がない。


 青山貞一(環境総合研究所所長)は、「『廃棄物焼却主義』の実証的研究 ~財政面からのアプローチ~」の中で「廃棄物焼却施設が土木工事同様、巨大な公共事業と化している」と指摘し、1995年度からの5年間で2兆7千億円余りの税金がその建設費に充てられていることを明らかにしました。また、ブランド研究所は「各国焼却炉コスト比較調査」で、我が国の焼却炉メーカーの、同型でほぼ同規模の焼却炉の建設費が国内の場合トン当たり5000万円前後で建設されているのに対し海外ではトン当たり平均1600万円程度であると報告しています。

 国内の焼却炉はまるで「ボッタクリ」と言いたくなるような価格です。

 ところが、上には上があって、現在福島県内で建設が続いている除染廃棄物の焼却炉は、たった1年か3年で解体してしまう「仮設」焼却炉なのに、トン当たりの建設費は1億円前後だというのです。「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会」の調べ(2015年5月現在)では、19か所の仮設焼却炉のために、把握できているだけで、3200億円あまりの血税が投入されるとか。

 青山さんが論文を公表したころ、東京国税局は、大手焼却炉メーカーの取得隠しを摘発しました。N社は3年間で5億円の所得を隠し「反対運動に対する地元対策費」としてバラ撒き、相次いで摘発されたK社は5年間で18億円、E社は5年間で6億円の所得を隠しごみ焼却施設建設のための「地元対策費」に使ったというのです。

 いうまでもなく、「地元対策費」は建設に反対する住民に「お静かに」などとして配られたものではありません。事業を推進する者に「反対運動など蹴散らして是非わが社に」と渡されたのではないかと勘ぐることができます。菓子折りの二重底には入りきらない金額です。

 不思議なことに、所得隠しは摘発されてもばら撒かれた「地元対策費」を受け取った側の姿は明らかになっていません。

 危険な「仮設焼却炉」建設というボッタクリのような事業の見返りとして、一部が永田町の住人に見返りとして流れ、霞が関のエリートたちの接待費や退職後のために用意される高級なイスの「退職金」として消えていないことを願うばかりです。

 国立競技場の建設費なんて、かわいいものです。

 

 


 行政用語ではトンネルを掘って出る土砂の処理を「発生土利用」という話を聞いてやりきれない思いがする。

  トンネルを造ると出てくるのは土や岩石だけではない。プラスチックファイバー(数センチメートル程度の長さのポリプロピレン製の紐のようなもの)を含む特殊なセメントも「廃棄物」として大量に発生する。掘った穴をまず補強するためのセメントだ。これを削り、鉄筋と良質のコンクリートで目的に沿った頑丈なトンネルが造られる。

 トンネルを掘るときに出る土や岩石とトンネルを造る時に出る莫大な「廃棄物」とが区別されることはほとんどない。

  地下から掘り出された岩石は私たちが生活する表層の「土」とは異質のものであることを忘れてはならない。掘り出された岩石は、雨にさらされその土地の成分とは異なる無機塩類が溶けだす。高濃度の金属類や重金属類が溶出する岩石、それに、高い放射線(自然由来の)を放つ土砂もある。

  トンネルの「発生土」の「利用」の実態は、おおむね、沢への埋め立て(投棄と言い換えても良い)だ。その結果、沢水(伏流水も)の水質を著しく変えてしまうことが少なくない。地下水の水質を変えてしまった例もある。

やがて、劣化したプラスチックファイバーから化学物質が溶出するかもしれない。

  掘り出された新鮮な岩石には養分はなく植物が根付かない。粉々にされた岩石の大地からは、雨水が吹きだし、法面がはがれるなどの現象が絶えない。

やがて、その土地が造られたものであることも忘れられ、局地的な大雨によって、土砂災害誘発する可能性だって否定できない。

  先達が言い続けてきたように「うまい話には裏がある」と思った方が良い。「利用」は面倒な処理をごまかすときに使われることばでもある。何しろ、1キログラム当たりセシウムが100ベクレル以下の採石なら、建材として「利用」できる時代なのだ。


 「ゲンパツ」って何が問題なのでしょうか。福島第一原発事故が私に教えてくれたことは以下の通りです。

ⅰ 断層や津波より、地下水を避ける必要があること、

ⅱ 逃げ道の確保が絶対必要であること、

ⅲ 問題解決を、けっして、「有識者」などと呼ばれるいかがわしい権威者に委ねてはならないこと、

でした。


廃棄物の最終処分場について、私は「廃棄物が保持する有害物質が地層中にゆっくり漏れ出し、拡散しながら土壌粒子に吸着され、結果として、地層中に有害物質を希釈する施設」と定義づけるようにしている。施設が壊れても、ベントナイトやロームなど粘土質の分厚い地層があれば、有害物質を抱いてくれ、人が起こした「事故」がただちに「被害」になることは少ない。人間の技術の未熟さを自然に抱いてもらうのだ。

この考え方は、「指定廃棄物最終処分地」についても、高レベルの除染廃棄物の「中間処理施設」についても当てはまると私は思っている。

ベントナイトやロームであっても汚染水を遮断するわけではない。緩やかに浸透するからこそ有害物質や放射性物質を抱くことができる。そして、汚染水が地層全体に浸透した後は、安定した流れを持つようになる。だから、その土地の地質の緩衝量が埋立施設の規模を決める。

最終処分場が有害物質の緩衝装置であるとすれば、その立地は、第一義的に水源涵養域、水源の上流域、地下水の流れている土地を除外すべきである。おそらく、日本の国土の99%は最終処分場の立地不適地である。


 バグフィルターは灰がもつ粘性によって繊維面に灰同士がくっついて層をつくることで除塵する装置です。かなり改良されてきてはいますが、環境省が説明するように「99.99%のばいじんを除去できる」などというシロモノではありません。

バグフィルターは最も良い状態でも、ばいじんの90%(重量比)程度を取り除くのが限界だと言われています。新品や定期的な除塵後には、集塵率が60%程度に低下することが知られています。バグフィルターは繊維ですから粒子径が小さいもの、気化した物質(放射性核種も含む)は素通りしてしまいます。そのため、活性炭や消石灰を吹き込んでガス化した物質を吸着させるなどの装置も組み合わせています。

排ガスを排出基準以下に抑えるためには、排ガスの連続的なモニタリングによる燃焼管理が必要です。燃焼状態は燃焼ガス温度、塩化水素と一酸化炭素濃度を連続測定し、炎などの状態を目視で監視しながら温度や酸素の供給を制御します。そして、窒素化合物(ノックス)や硫黄化合物(ソックス)濃度、ばいじん濃度などの連続測定装置によって排出ガスを監視しています。

排ガス中のばいじんの除去は難しい技術です。そのため、巨大企業の高炉や廃棄物処理施設ではばいじんのデータを改ざんしたりインチキデータ公表し続ける例(行政の施設も例外ではない)が絶えないのです。

環境省は、これまで「個別案件にかかわらない」と公言していました。廃棄物の焼却施設をめぐる紛争があってもかかわろうとはしませんでした。そんな役所に集塵装置の能力を評価できる実践的な知識や技術はありません。だから、焼却炉メーカーのマークの入った説明資料を使って「99.99%除去できる」と言って恥じないのです。

関口鉄夫


 以前、お話したように除染廃棄物(高濃度の放射性廃棄物)の焼却によって放出される排ガスは、福島第一原発事故によって放出された放射性核種の比率が異なっています。

福島第一原発事故では、ヨウ素131(半減期8日)、セシウム134(同2年)、セシウム137(同30年)、ストロンチウム89(同51日)、ストロンチウム90(同29年)のほか、ウランやプルトニウムなどの放射性核種が放出されたことが確認されています。

事故から4年経った今、ヨウ素131とストロンチウム89はほとんど消え、セシウム134も2割少ししか残っていません。自然減衰です。これに対し、半減期が29年のセシウム137とストロンチウム90は1割程度しか減っていませんし半減期が2万4千年のプルトニウム239や44億年のウラン238の量は全く変わっていないはずです。焼却施設からはこれらの放射性核種がばいじんに吸着したり気化して排出されます。

みなさんのところに設置された「仮設焼却炉」は4年半にわたって稼働する計画だとか。4年半(およそ1,300日)にわたって1日数十万立方メートルもの汚染ガスを放出し続けます。

必然的に、かなり広い範囲(地形や気象条件によっては局地的な強い汚染も生ずる)にわたって、深刻な二次汚染が起こる可能性が否定できません。二次汚染は非常に減衰しにくい放射性核種による汚染です。

※この文書は福島県内に建設された除染廃棄物の「仮設焼却炉」について、Sさんへのメールに加筆したものです。数回に分けて連載します。

※次回は排ガス処理のインチキです。

関口鉄夫


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「産直ドロつき通信web版」編集長 関口鉄夫