3 月 2017


 『暮しの手帖』87が、3月25日に発売になりました。澤田康彦編集長が編集後記の半分を割いて、前号の「電力は選ぶ時代」に対して送ったぼくらの意見に触れて書いておられます。これをお返事と思って、編集後記の後半の関係する部分を、ここでご紹介させていただきます。

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前号の「電力は選ぶ時代」の記事には少なからぬ反響がありました。読者から、電力供給や料金の仕組みがわかり、現状を見直すきっかけになったといったお葉書もいただきました。

一方で「自然エネルギーならよいのか?」というもうひとつの大切な議論、ご教示も頂戴しました。骨子は、太陽光パネル=大規模メガソーラー設置により、いかに広大な面積の自然が損なわれ始めているか、というものです。

長野県で発行されている雑誌『たぁくらたぁ』の野池元基編集長から届いた丁寧なお便りの一部をご紹介します。

「長野県では、1ヘクタール以上の森林を開発する時には、県の林地開発許可が必要になります。この制度は、高度経済成長時代に、ゴルフ場やレジャー施設による環境破壊が起きて、その対策としてできたものです。現在は、この制度による申請のほとんどが太陽光発電です。そしてかつてのゴルフ場造成ラッシュなどと同じことが、太陽光発電で起きています。(中略)こういう現実を問うことなしに、中央からの“再エネ推し”の情報が地方に流れてきます。それで地方が翻弄されます」

例えば「原発がイヤ」だからといってすぐ、「では再エネに」と簡単にはいかない、という重要で喫緊の課題がここにある。都会の繁栄のために「地方が翻弄」される。考えさせられます。

小誌記事はもちろん特定の企業を推すものではなく、「一年に一度は、この電力会社でよかったのかどうかを、自分の電気の使い方も顧みて、見直し、より考えの近い会社を選んでいきましょう」(本文)というのがテーマです。

人類の文明の血液ともいうべき電気。「原発をやめて電気のない江戸時代に戻るのか」なんて極端な発言をするテレビキャスターがいましたが、それはともかく、どれも地球に負荷のかかる火力、水力、太陽光、風力、地熱……ベストはなくてもどんな発電方式を選ぶのか。原子力は是か非か? 子孫に何を残していくのか? ぜひみなさんも考えをお寄せください。(澤田康彦)

これを読み、澤田さん宛てに返事を書きました。 それについては稿を改めて記します。(続く)


長野県内でLooop(ループ)社が関わる大規模太陽光発電所の計画は、もう一つあります。上田市真田町のあずまや高原に計画されている敷地面積2.1ヘクタール、891キロワット(0.891メガワット)、ソーラーパネル3430枚の発電所で、予定地は上信越国立公園内にあたります。事業者は投資会社HJアセットマネジメント社(本社:東京)で、Looopが設置工事を請け負うことになっているのです。

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この計画地に道路を挟んで隣接しているのが、平塚らいてう記念施設である「らいてうの家」です。NPO法人平塚らいてうの会が2006年に建て、「平和・協同・自然のひろば」と名づけて運営しています。平塚らいてうの会会長でありこの家の館長でもある米田佐代子さんが、この計画に反対する記事を『たぁくらたぁ』41号に寄稿してくださり、「国立公園内の太陽光発電設備が自然環境や景観を破壊することへの異議と同時に、「人間と自然の一体化」を求めたらいてうの思いを受け継ごうという理念が壊されることに危機感がある」と述べておられます。

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米田さんはブログ「米田佐代子の「森のやまんば日記」」で、この計画について何度も書いておられます。ここにメガソーラーを建設すしたら環境にどんな影響を及ぼすのか、という論点よりもむしろ、暮しの在り方から太陽光発電を問うており、この問題を考えていくための想像力を広げてくれるはず。『たぁくらたぁ』の記事とともに、ぜひ読んでいただきたいのです。

拝啓 『暮しの手帖』様    『暮しの手帖』86号「電力は選ぶ時代」に異議あり!   (他にも関連記事がいくつもあります)

また、Looopの霧ヶ峰下の メガソーラー計画については、以下のブログに詳しく情報が載っているので、こちらもぜひご覧ください。

太陽光発電問題連絡会 

さて、3月25日に『暮しの手帖』最新号が発売になります。「電力は選ぶ時代」について、編集部宛てに私たちが送った意見について、どんなふうに答えてくれるのでしょうか。(続く)


Looop社の89メガワットのメガソーラー計画がもし建設されれば、もっとも影響が及ぶ地域である茅野市米沢区。そこにお住まいの塩沢幸子さんが『暮しの手帖』に送ったご意見を記します。

「暮らしの手帳」86(2-3月号)を読ませて頂きました。「電力は選ぶ時代」―ユニークな新電力会社の紹介― に関して意見を述べさせていただきます。主に、第一番目に紹介されている(株)Looopに関してです。

長野県諏訪市、国定公園霧ヶ峰の直下僅か500m地点に開発計画地面積188ha(約1㎞×2㎞)、89メガワット、パネル数31万枚というメガソーラーを(株)Looopは計画しました。里山より標高の高い森林地帯(1300~1500m)でありながら大規模伐採を伴い、工事から出る土を河川に盛り土にし、ダム規模ではありながら、高さ15mに達していないことや20年後に撤去可能ということで「簡易的堰堤」を作り、調整池は4か所作るという計画です。

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(盛り土が予定されている横河川上流 撮影・小林桂子さん)

諏訪湖のある諏訪市側の計画ではありますが、地形から災害の危険性は、私の住む茅野市側の下流域に及びます。霧ヶ峰一帯を涵養域にする水道水源(茅野市・諏訪市)にも影響を及ぼす地域です。また、上部の国定公園に続く自然環境にあり、5つの湿地があり、県レッドリストに指定されているミズゴケ群もあります。国の天然記念物ヤマネも確認されています。

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(計画内の高層湿原。周囲の木々は伐採される 撮影・小林桂子さん)

現在、全国で最初の大規模太陽光発電の長野県環境影響評価(アセス)の対象になり、現在アセス準備書に向けた調査段階です。

地元住民としては、土石流災害、水源への影響、自然環境等様々な問題を含んでいる計画に対し、地区として反対の要望書を提出(県・茅野市)しました。霧ヶ峰南面に位置する我が北大塩地区は、一旦霧ヶ峰に激しい降雨があれば、数時間のうちに流れ下る4本の川が一気に増水する危険な位置にあります。昭和58年の台風では4本の川が全部氾濫し、地区中が水浸しになる大被害を出しました。計画地の山肌を裸にし、大規模な調整池を作り、更に川の中に工事で発生する土を10トントラック5万台分盛るという、考えられない危険な計画がもし実施されたら、特に計画地から流れ下る横河川筋に暮らす人達は今後、雨が降る度に不安を抱えることになります。

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(昭和58年の横河川の氾濫。北大塩地区 写真提供・塩沢幸子さん)

更に危惧されるのは、固定価格買取制度(FIT)終了後の見通しが立っていないことです。そのまま発電を続けるのか、誰が続けるのか、撤去する場合の具体的な計画もありません。企業が途中で倒産した場合の見通しも分かりません。20年後の残された堰堤を含む施設の管理がなされなくなった場合の危険度は更に大きくなり、31万枚のパネルと100個のコンデンサーが取り残される危険もあります。土地はLooopが取得するので、その後誰の手に渡るかもわかりません。諏訪地方の水源涵養の重要な地域の将来は見通せなくなります。

アセス業者見解(アセス技術委員会)や説明会での返答では、法律や条例を数値的にクリアしていることで押し通そうとしています。説明会での地元の不安は一つとして立証・解消されていません。

記録に、「我々は専門ではなく不慣れなのでアセス業者なら何とか方法がある」という文章がありました。アセス業者は科学者ではなく、利益を得て業者の言い分を通す立場となっています。事業計画を進める中で、この地域の特質や注意点が次第に見えてくるはずですが(株)Looopもアセス業者も無理を通してでもやり遂げたいようです。地元意見、市町村長意見、知事意見、技術委員会の指導をどう理解しているのか、ほとんど当初の計画内容のままです。営利を目的とする企業の権利はあっても、社会的に受け入れられない計画だと私は思っています。

* * *

CO2削減や原発の問題は理解しているつもりですが、だからと言って太陽光発電にもろ手を挙げて賛成はできません。長野県ではアセスに至った計画はすでに3件。いずれも都会の業者が関わっています。地元はそうした企業にモノをいう事は簡単ではありません。やがて、地元の考えや立場の違う人の間に溝を作ります。行政は違法がない限り中止させることができません。報道は、再生可能エネルギーの良いことは伝えますが、それらの問題を大きく取り上げることはありません。そして一部の利益のために、地元の自然環境、生活環境、伝統、将来が壊されていきます。

小規模においても近隣・地域に過剰な負担をかけている例があります。地方の限界集落に田舎暮らしを夢見て移り住み子供を育て始めた時期に、耕作放棄地に次々とパネルが立てられ、家の周囲・お墓の周りまでが囲われ、結局引っ越しせざるを得なくなった若夫婦もいます。

太陽光発電はメガも小規模も地方の自然環境、生活環境を脅かす例が大きな問題になってきています。地方の現状を知らないまま、都会では再生可能エネルギーの太陽光発電を簡単に勧められ、疑問を持たれないことに、今イチオシの業者(株)Looopと対峙している私は非常に抵抗を感じます。

昨年のNHKで放映された朝の番組で知った『暮しの手帳』の趣旨とは大きくかけ離れているように思われます。経費節約のため、粗雑な製品を販売した洗濯機メーカーにお灸をすえた、番組のような展開にはならないのでしょうか…?

なお、塩沢さんは『たぁくらたぁ』39号に「巨大メガソーラーの見通せない危険」を寄稿してくださっています。 (続く)