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2015年5月12日号「南相馬5月7日」


南相馬から福島へ戻る前に、小高と浪江を回りました。

◉小高区「減容化処理施設」
*搬入車の〝反則〟
小高に建設された「減容化処理施設」は、巨大でした。
2月にここを見たときにはまだ完成していませんでしたが、この日行ってみたら、すでに稼働していました。
放射性廃棄物のフレコンバックを運搬するには、それ用の仕様車があるそうです。
でもこの日に施設に出入りする車の中には、一般ゴミ運搬車もありました。
私たちがそこに居たごく短かい間に目にした搬入車は、特別仕様の車は1台だけ、ダンプやトラックなど特別仕様ではない車体のものが6台でした。
こうした車での搬入は、運搬中にも汚染物質が撒き散らされることも考えられます。

*住民の側からの監視を
小高の減容化処理施設は海岸近くですが、小さく半島のように突き出た小高い山陰にあります。
公道からは全貌は見えず、南の方から見れば煙突と冷却塔の上部が少しこんもりした木立の上に覗いていますが、それが焼却施設だと知らずにみれば、何かの工場だと思うでしょう。
今回、初日の5日に見た霊山の施設も、また、以前に見た鮫川村の施設や都路と川内村の境界辺りの施設建設地(ここは東京電力の敷地内だったので、中まで入れず場所を見ただけですが)も、こうした施設はどこも、人家から離れた人目につきにくい場所に建設されています。
施設が出来てしまえば、そこで何が燃やされているか判らないという状況が生まれます。
3月のトークの会で関口さんが言っていた、住民の監視が、ほんとうに必要で大事なことだと思いました。
施設周辺の水質検査、季節や時間帯によって変る風向きと、その風下にあたるところの草木の状態検査、などなど定点観測を定期的に続けていくことがとても大事だと思います。
施設入り口などにモニタリングポストが設置されてはいますが、設置場所は風向きなどは考慮に入れずにおざなりに選んだような場所です。
そんなモニタリングポストでの数値(たとえそれが、まやかしのない実際の計測値だとしても)だけを、判断基準にしてはならないと思います。

◉浪江町
*請戸
浪江は今も、住民が一時帰宅する場合にも通行許可証がないと入れません。
私たちも役場で「仮通行証」を貰って入り、県道を双葉との町境まで行きました。
道の海側は瓦礫置き場になり、荒く仕分けされてそれぞれが山になっていました。
以前は請戸小学校の校庭に山高く積まれていた瓦礫も、分別されてこちらに移されたようでした。
大きな瓦礫は殆ど片付いていて、一角では火ばさみや小さなシャベルなどで細かい瓦礫を片付けている人たちもいました。
被災前の請戸を知りませんが(いえ、請戸ばかりか県内のどこも、被災後に尋ねるようになったところばかりです)、ずいぶん賑わっていた漁港だと聞いています。
浪江町では、6号線を中心に2年後に避難解除という復興計画ですが、漁港の再開はどうでしょうか?
町境の辺りには、まだ津波で流されたときのままの車が数台転がっていました。
役場で申請した「仮通行証」が出るのを待つ間に、そこで測った空間線量は0.18μSv/hでした。

*浪江から避難して
前日にいわきに行って帰る道中のことです。
常磐自動車道を使いました。
途中の四倉パーキングエリアには、放射線情報が掲示されています。
各インターチェンジには測定器が設置されていて、そこでの測定値が自動的に送られて表示されるのです。
私たちが掲示板を見ていたときに、後から来て見ていく人がいました。
初めの人は若い女性で、彼女が掲示板を見上げたときに野池さんが声をかけました。
「こういう数字を見て、意味がわかりますか?」
女性は、「はい、わかります」と答え、浪江から仙台に避難しているのだと言いました。
野池さんが「わかりますか?」と尋ねたのには、訳があります。
高線量地帯を通り抜ける自動車道路ですから「通行中は窓は閉め切って、エアコンは内気循環に。オートバイの通行は禁止」と注意が出されています。
野池さんは、以前にここを通った人たちにインタビューをしたことがあったのです。
他県ナンバーの大型トラックの運転手たちは、掲示板のシーベルトの意味を知らなかったそうです。
また福島県警のパトカーで通った若い警察官は「線量?そんなに高くないですよ。高いところで20μシーベルトくらい。長時間居るのでないから、総被曝量は大したことではないです」と答えたそうです。

次に掲示板を見に来たのは、50代くらいの意男性でした。
野池さんが同じように質問すると、さっきの女性と同じように「はい、わかります」と答え浪江から避難していると答え、先の女性のお父さんだったのです。
彼の話です。
浪江の病院に勤めるお医者さんでした。
何ヶ所かの避難所を経た後、今は小名浜の仮設住宅に住んでいます。
小名浜に来てから病院の勤め先を見つけて働いていましたが、この2月にその病院は廃院となり、現在はアルバイト暮らしだそうです。
仮設で暮らすのは、とても肩身がせまいと言います。
元々の住民たちからは「お金をもらってぶらぶらしている」などの声が聞こえて、差別感を感じると言いました。
「避難後の人たちの健康について、気になることはありますか?」と質問した私たちに「あります」と答え、それについて話し出そうとしたときに奥さんが「早く帰りましょう」と迎えに来て、話は聞けずにしまいました。
じっくりとお聞きしたかったと思います。
*前便でお知らせした『たぁくらたぁ』35号に、野池さんの「帰還困難区域をとおる国道6号」の記事があります。この記事もぜひ、読んでいただきたいです。

*差別を感じる
浪江から避難しているお医者さんから、「差別感を感じる」と聞きましたが、これは被災者の多くが口にする言葉です。
今回訪問した寺内塚合、寺内塚合第2仮設住宅でも同様のことを聞きました。
他の仮設住宅の人たちからも、以前から聞いています。
心無い非難、差別の言葉が避難者にぶつけられているのです。
長谷川さんも、今回こう言っていました。
「仮設の年寄りたちが、朝散歩に行くと『あんたら賠償金もらって、働かないでぶらぶらしてられていいねぇ』って言われるって、散歩のコース変えたりしてんだぞ。
80の婆さんに『働かないで』なんて言うのはどうかと思うけどな。
でも、避難して仮設に住んでるってのは、そんな目で見られるんだな。
だけど避難暮らしが長くなると、自分でもなんか後ろめたい気になるんだよ。
俺なんかも高速道路通るとき、証明書見せるとタダだべ?
そのとき、なんか気が引けんだよな」
外部からの、被災者に向けるまっとうでない非難の言葉と、落ち度はないのに自分でも感じる引け目。
こうしたことが差別を固定化していくのでしょうか。

◉帰路の飯舘村で
飯舘村を抜ける時に、深沢地区で一旦車を止めました。
畑は道路よりも一段下がったところに広がっていますが、被災前には田んぼだったところです。
今は、その畑地にフレコンバックが積まれています。
農地除染で飯舘村は広範囲に表土を剥ぎましたが、剥いだ後に他所から運んだ土を被せて、また畑地として再生させる計画です。
土盛り後の畑地は代赭色に見える場所もありますが、所々に砂浜のように白っぽい色の場所もあります。
ちょうど路肩のすぐ下の畑地が、そんな風に白っぽい色のところでした。
その畑地へ下りてみました。
拳大ほどの石や、もう少し大きかったり小さかったりの石、コンクリート片が、いくつも転がっていました。
そんな土の塊を拾ってみると、護岸のような場所を崩した時にでてくる土塊のようでセメント部分も見えました。
思わず心の中で叫びました。「馬鹿にしてる!!」
農業体験のない素人の私にだって判ります。
こんな土では、何も育てられません!
「避難解除になって戻ったって、戻った人が事故前の生活ができるか?」と言った長谷川さんの言葉が、頭の中でぐるぐると回りました。
畑の土を剥ぐ、これは農家にとっては大変なことです。
農業はまず第一に土つくりと言われるように、耕し、堆肥などを漉き込み、肥料を撒いたりして豊かな土壌に育てあげるのです。
けれどもここでは、せっかく育ててきた畑の土ですが、放射能が降り注いだために除染で表土を剥ぎました。
そして「農地再生」で盛られたのが、この土です。
農地再生もまた、おためごかしです。
いやそれ以上に、この有様は悪意としか思えませんでした。
ここで測定した空間線量は3.46μSv/h、接地線量は1度目が 7.74μSv/h、2度目の測定値は 8.234μSv/hでした。
「帰村」…、帰りたい人はいるでしょう。
でも国や行政がそのように方針を立てて人々を戻させようとすることは、絶対に間違っています。

*耕す人
そのすぐ先で、小さな耕運機で土を起こしている老人と、既に鋤き起こした畑地に畝を作り何か種を蒔いている老女がいました。
きっとご夫婦でしょう。
耕運機で耕している場所の隣の畑には、植えられた苗木がお行儀よく並んでいました。
果樹のようでした。
野池さんはブルーベリーではないかと言います。
ブルーベリーの根は細く地表近くに広がって伸びるので、セシウムを吸収しやすいそうです。
それならば老夫婦は、戻ってここでの暮らしを再開するために、畑を作っていたのでしょうか。
それとも、いつか誰かがここに戻って暮らしていく日のために、ブルーベリーを植えて大地の除染をしていたのでしょうか。
再び長谷川さんの言葉が胸に蘇ります。
「雑木林にはしない!」

︎即座の報告ができずに、随分遅れた報告になりました。
最後までお読みくださって、ありがとうございます。           

いちえ

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