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2017年8月22日号「8月19日信州白馬村」


19日(土)、白馬村の「深山の雪」に行ってきました。
大熊町から避難した木村紀夫さんが、長女の舞雪(まゆ)さんと暮らすところです。
木村さんは元ペンションだったこの住居に移り住んだ当初は、原発の電力に頼らない「持続可能な宿」として、ここを運営していこうかと考えていましたが、木村さんの「持続可能な」という思いに賛同する支援者たちが集まるようになり、その後は「持続可能な生活」を模索する場として「深山の雪」を主宰しています。
木村さんは行方不明になった二女の汐凪(ゆうな)さんを、あの日からずっと探し続けてきました。そして支援者たちと「team 汐笑(ゆうしょう)」を立ち上げて捜索活動とともに、大熊町の自宅周辺を菜の花畠にし、また桜の苗木を植えています。
汐凪さんの遺骨の一部が見つかったのは、あの日から5年9ヶ月過ぎた昨年末のことでした。

また、2014年からは「忘れないから始まる未来」として、持続可能な暮らしに向けてのイベントを催してきています。
この日に私が「深山の雪」を訪ねたのも、そのイベントに参加するためでした。

●「忘れないから始まる未来」
2014、2015年はトーク&ライブでしたが、昨年(2016年)は「原点回帰探検隊 はじめての火おこし編」として、自分たちで火を起こし、その火で料理をして食べ、語り歌いという会でした。
今年は【原点回帰探検隊 はじめての小屋づくり編 〜「火」から「灯」がともるまで】でした。
これまでのことを下に記します。
*大熊町で
 大熊町の菜の花畠は、「汐凪の花園」です。
昨年も汐凪の花園は、菜の花で一面の黄色になりました。
今年は一面の菜の花畠に汐凪さんの後ろ姿を、地上絵で描きました。
そして花が終わってからは菜種油を手作業で搾油したのです。
*白馬村で
「深山の雪」は持続可能な生活の場として、これまでも様々な活動をしてきました。
ロケットストーブ作り、鹿肉の解体、畑作り、薪割りなどなどです。
また、みんなが集まって催しをする際の舞台になるようなテラスも作りました。
もともとはボイラーで風呂を焚くようなペンションでしたが、ボイラーは木村さんの「持続可能な生活」の趣旨に合いません。
今年は五右衛門風呂を作ったのでした。
木村さんは以前からここに、汐笑庵(じゃくしょうあん)という小屋を作りたいと思っていました。
汐凪ちゃんを思う人たちみんなで、ここで笑っていられるようにとの願いを込めた命名です。

●原点回帰探検隊 はじめての小屋づくり編 〜「火」から「灯」がともるまで〜
今年のイベントは、「火おこし」が成功しないと始まらないイベントです。
汐笑庵の基礎石は大熊町の実家で使われていた、津波にも流されずに残っていた基礎石を使います。
この日は柱や梁を組み立てて棟木を上げるまでをやり、棟上げ後には餅投げです。
2017年の「忘れないから始まる未来」のテーマは「住」で、棒を擦って火をおこし、薪をたいてお風呂に入り、小屋を作って灯りを灯すまでという流れのイベントでした。
大熊町の汐凪の花園の菜種油に灯した火が、汐笑庵の灯りになるのです。
福島県大熊町と信州白馬村が、一繋がりに結ばれるのです。
私は予定していたバスに乗り遅れてしまい、深山の雪に着いたのは19日の1時すぎでした。
参加者は思い思いの持ち場で作業をしたり語らったり。
いつもここで会う懐かしい人や、はじめて会う人たち、子どもたちも大勢参加していました。
森の中には子どもたちが遊べるような滑り台も設置されていました。
小屋づくりの材木は、近くの真木共働学舎の村内廃屋の使える材木を譲り受けて使っていました。
棟梁は美術家の小池雅久さんです。
他に男衆が何人もで、鋸を引き、のみでほぞ穴を開け、汗を流しています。
こちらでは、棒を擦って火をおこし、薪で湯を沸かしもち米を蒸しす人がいます。
少し大きな子どもたちはビニールシートの上で、石臼を回しコーヒー豆を挽いていました。
つまり、何もかも動力を使わず手作業で、それも楽しみながらやっているのです。
もち米が蒸しあがって、木臼が用意されて餅つきが始まりました。
あらかたつき上がったところで、子どもたちの出番です。
誰もが「やりたい。やりたい」というので、順番にペッタンペッタンついて、みんなとても楽しそうで、得意そうでもありました。
つき上がった餅は、きな粉餅、エゴマ餅でふるまわれました。
エゴマは浪江町の関場さんが、避難先の日立市の畑で栽培したエゴマです。
ここでの大工仕事は動力を使わず手作業でしたから、当初考えていたよりも作業に手間取ったようです。
棟梁の小池さんは、「自分の中には電気の時間が流れていることを感じました」と言っていました。
どういうことかと言うと、4本の柱を立て、梁を渡しという一連の作業にかかる時間を見積もるのに、日頃の作業では電動ノコなど動力を利用することも多いですから、それから換算しての手作業での進行表を想定したのに、手作業がこんなにも時間を必要とするのだということに、あらためて気が付き、体の中には電気の時間が染み付いていると思ったというのです。
小池さんだけではなく大人たちの誰もが、ここでは日頃の暮らしを見つめ直し「持続可能な生活」に想いを至らせたのでした。
無事に棟上げができて、棟の上からあらかじめ用意されていた袋入りの餅や菓子が投げられ、子どもたちは目を輝かせて拾っていました。
「原点回帰探検隊」隊長の木村さんが、大熊町の現状や捜索の進捗、現在の生活について話されました。
最後に棟上げが済んだ汐笑庵をバックに全員で集合写真を撮影して、この日のイベントを終えました。
そのあと残れる人たちは後夜祭アフターイベントで、歌い語らい一夜を共にしたようですが、私は5時過ぎのバスで白馬をあとにしました。

●次回のトークの会「福島の声を聞こう!vol.25」
 次回は10月20日(金)19:00〜21:00です。
ゲストスピーカーは木村紀夫さんです。
木村さんには2012年12月の「トークの会福島の声を聞こう!vol.4」でお話いただきましたが、あれからのこと、汐凪さんが発見されてからのこと、これからの生活、持続可能な生活について思うことなどをお聞かせいただこうと思っています。
どうぞ、ご予定に組んでおいてくださいますよう、お願いいたします。   

いちえ

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