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2018年2月9日号「南相馬・避難20mSv基準撤回訴訟」傍聴報告


 1月22日は東京地裁103号法廷での、件名の第10回口頭弁論期日でした。
閉廷後、参議院銀会館で報告会がありました。
大変遅くなりましたが、報告です。
●この裁判は
 この裁判は、年間20ミリシーベルトという基準で国が避難解除をしたことの是非を争点としています。
2014年12月、政府は南相馬市の特定避難勧奨地点について、年間積算被ばく線量が20ミリシーベルトを下回ることが確実になったとして避難解除し、その後順次支援策や賠償を打ち切っています。
これに対して地点に指定されていた世帯や近隣の世帯、合計808名が、解除の取り消しなどを要求して2015年4月•6月に国(原子力災害対策現地本部長)を相手取り提訴したものです。
●原告の主張
 原告は、次の3点から20ミリシーベルト基準での特定避難勧奨地点の解除は違法であることを主張しています。
①公衆の被ばく限度が年間1ミリシーベルトを超えないことを確保すべき国の義務に反する。
②政府が放射線防護の基準として採用している国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に反する。
③政府が事前に定めた解除の手続き(新たな防護措置の実施計画の策定、住民等の意思決定への関与体制の確保)を経ることがないまま解除を強行した。
●これまでの9回の裁判期日の経過と現状
 そもそも特定避難勧奨地点の解除について、これを争う裁判が可能なのか(処分性の有無)という入り口論が争われてきました。
原告からは訴状に記載した解除の違法性をさらに論証する為に追加の主張立証を行ってきました。
①第2回期日
 国のいう「裁判に当たらない」に対して、その処分性に対する反論を主張。
②第3回期日
 現地の放射能汚染状況について、「ふくいちモニタリングプロジェクト」が作成した空間線量のメッシュ地図を提出。
③第4回期日
 南相馬市や国の資料に基づき、解除に易々たる意思決定の過程で住民が参加する機会がなく、住民の声を無視して解除が強行された事実を主張。
④第5回期日
 原告の陳述書、計21通を提出し、原告が放射能汚染に対して不安を抱えていること、解除によって住民が帰還を強要されていることを主張。
「ふくいちモニタリングプロジェクトが行った原告の原発事故当時の自宅の放射線量に基づき、原告の95%以上の世帯について、推計年間被ばく線量が、公衆の被ばく限度とされている1ミリシーベルトを超えることを主張。
 同プロジェクトが行った原発事故当時の自宅の土壌汚染状況を明らかにする資料も提出し、原告の96%の世帯で、放射線管理区域の基準に相当する1平米あたり4万ベクレルを超えるセシウム137に汚染されていることを主張。
⑤第6回期日
 原告の準備書面8を提出し、地域メッシュモニタリングの結果に基づき、原告らの居住する地域の土壌汚染状況について主張。
 準備書面9を提出し、原告の陳述書に基づき、本件解除が手続き上の要件を欠いた違法のものであること。本件解除が非指定世帯との関係でも国賠法違法であること、そして解除に対する原告の想いについて主張。
 被告の求釈明事項(原告に対し説明を求めている事項)に対して回答を提出。
「平成23年7月19日付原子力安全委員会による『今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方』及び平成23年8月4日付の原子力安全委員会による意見」が、特定避難勧奨地点の解除の際の基準となること等について説明。
また、本件解除手続きの違法を主張する際に根拠をする法律が、改正前原災法であることの理由について説明。
⑥第7回期日
 本件訴訟の前提とされるべき放射線の健康影響に関する科学的知見について主張。
具体的には、被告の主張の根拠である低線量ワーキンググループの報告書には、人選の偏り、検討期間の短さ、ステークホルダー(利害関係人)の欠如という問題点があることを指摘し、近年の科学的知見に基づく放射線の健康影響に関して主張。
⑦第8回期日
 本件訴訟の前提とされるべき放射線の健康影響に関する科学的知見について主張。
原爆放射線の人体影響及びチェルノブイリ原発事故での人体影響に関する調査研究について取り上げ、放射線の人体影響が明らかになるには長期間の歳月が必要であるにもかかわらず、低線量WGの報告書はこの点を無視していることを主張。
 原子力安全委員会による「防護に関する考え方」及び「解除に関する考え方」の法的位置付け似ついて、これらが本件解除に当たって原子力災害特別措置法に基づく原災本部長の裁量行使の基準となることを主張。
 解除手続きの違法性に関する被告主張に対する反論。
⑧第9回期日
 ❶本件解除がICRP勧告の放射線防護の原則に違反することに尽き被告の意見に反論しながら補充し、❷本件地域の放射線量(公衆の被ばく限度)や、❸土壌汚染について考慮することなくなされた解除は違法であることを主張。

◎報告会
●福田健治弁護士
 原告側は本日の期日に向けて提出していた2つの準備書面について、原告代理人が説明をした。
*準備書面15
 「特定避難勧奨地点」の設定は、法律に根拠があるのかを争点としている。
原子力特別災害措置法(原災法)という法律に基づいて、避難区域・警戒区域・計画的避難区域の指定が行われている。
同時に特定避難勧奨地点は、この法律に基づく緊急事態応急対策として行われた。
従ってこの解除、いつ解除していいのかにあたっては、当時「原子力安全委員会」が一連の意見を出しているので、この意見に従って解除すべきなのに、今回は住民の声も聞かず一方的な解除が行われた。
これが、違法の一つ。
 被告は、「そもそも地点の指定・解除は原災法に言う所の緊急事態応急対策に該当しないから、原子力安全委員会の意見に従わなくて良い」と後付けで主張を出している。
被告の言い分は、「緊急事態応急対策は緊急とあるのだから、そもそも直ぐにやるものだけがこれに当たる。しかし、特定避難勧奨地点指定は2011年7月の指定だったので迅速ではなく、だからこれに当たらない」
こんなおかしな屁理屈を言っている。
国が迅速にやっていなかったんだろう!ということなのに、ひっくり返ったことを言っている。
 もう一つ放射線の健康への影響が大きな論点になっている。
最近の知見を含めて主張したところ、国は100ページもの大規模な反論を出してきた。
これから、それに対する反論を出していく。
 特定避難勧奨地点が解除されて原告は不利益を被っていること、避難の権利が侵害されているというのがこの訴訟だが、その二つの大きな影響は❶東電からの賠償の打ち切り❷応急仮設住宅供与の打ち切りだ。
この裁判を始めた段階では、住宅供与は打ち切られていなかったが、昨年3月で打ち切られ、今回この問題が出てきたので、これについて追加の主張を行った。
現実問題として辛い状況にあるのだが、期日はだいたい3ヶ月ごとだが、その3ヶ月の間に2回、裁判の報告として原告の方202世帯808名の方に通知を出している。
そうすると3月4月の間に転居先不明でだいぶ戻ってきてしまう。
応急仮設住宅の打ち切りによって、避難の権利に明確な影響が出ている。
戻らざるを得なくなっているのかと、胸が痛い。
 訴訟はそろそろ終盤に差し掛かっていて、これから被害の状況を法廷の中で話していただく本人尋問で進めていきたい。
 もう一つ大きな影響があると思われるのは、3月で裁判長が移動になるだろうということだ。
彼がどういう人かは別だが原爆症の認定の関係で東京の集団訴訟の判決を彼が書いていて、それはまぁまぁ良い判決だったので、少なくとも放射能に関しては一定の関心がある人かなという感じはあるが、おそらく3月で移動になり、次の裁判長がどういう人かを、注目しているところだ。

●「ふくいちモニタリングプロジェクト」中村さんからの報告
 1月に原告の内の15世帯の宅地内の土壌汚染測定をした。
宅地内4〜6ヶ所、15世帯で63ヶ所の測定をした。
その結果は平均で403,000ベクレル/平米、高いところでは2,000,000ベクレル、低いところで10数万ベクレルだった。
2015年よりも高くなっている。

*この日は前の晩からの雪が朝の内はまだ降っていたのですが、傍聴席はいっぱいになりました。
南相馬からの原告団は、バスでの帰路が案じられたために報告会には参加せずに閉廷後南相馬へ戻りました。                        

いちえ

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