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2018年3月10日号「3月8日『のりこえねっと』記者会見」


◎8日、BPO放送人権委員会決定について、「のりこえねっと」の記者会見が行われました。
●渡独は事実上の亡命だった
 辛淑玉さんは昨年11月に渡独され、私はドイツから招聘されて研究活動のための渡独なのだろうと思っていたのです。
ところが3月2日付の沖縄タイムスの記事を読んで、衝撃を受けました。
辛さんが同紙の寄せたコメントが載っていました。
「私がドイツに逃れたのは、極右テロからの自衛であり、事実上の『亡命』です。旧大日本帝国は父祖の地を奪い、MXは私のふるさとを奪いました。帰れるところは無いのです。」
 昨年1月2日に東京MXが流した番組「ニュース女子」が、虚偽とデマに満ちた内容、差別とヘイトを煽動する内容だったことから、「のりこえネット」は抗議をし、また辛さんはBPO(放送倫理・番組向上機構)放送人権委員会への申し立てをしてきました。
昨年12月にBPO放送倫理検証委員会は、「重大な放送倫理違反があったとする」と意見書を発表し、その後の記者会見でも「放送してはならないものを放送してしまった」とまで言いました。
そして8日、BPO放送人権委員会の決定として、東京MXに対して勧告が発表され、辛さんは一時帰国されて記者会見をされたのでした。

●BPO放送人権委員会の決定の概要
 1月2日、9日の「ニュース女子」は、事実に基づかない内容を放送したことで辛さんの社会的評価を低下させ、辛さんに対する名誉毀損の人権侵害が成立すると、はっきりと言っています。
 また、「日本民間放送連盟 放送基準」では「人権・民族・国民に関することを取り扱う時は、その感情を尊重しなければならない」としているのに、そのような配慮を欠いていた、とも言っています。
 そして、「委員会は、TOKYO MXに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、人権に関する『放送倫理基本綱領』や『日本民間放送連盟 放送基準』の規定を順守し、考査を含めた放送のあり方について局内で十分に検討し、再発防止に一層の努力を重ねるよう勧告する。」としています。
◎記者会見で
●記者会見での辛さんの言葉をお伝えします。
 最初にこの決定を聞いた時に、民族差別にも触れていたので、涙が出ました。
この社会で暮らしていく在日の人権、マイノリティの人権が、こういう形でBPOで語られたことを嬉しく思っています。
 同時にBPOがこれを口にしたということは、BPOもまた私と同じように叩かれるということです。
それでもBPOの決断は、放送人の最後の良心の決断だったと思います。
どんなに政権におもねった番組を作っても、視聴率の稼げるような番組を作っても、これをやってはダメなんだ、放送人としてやってはいけないのだということを明確に示してくれたと思っています。
 私自身は、これを訴えるのはとてもきつかったです。
それを支えてくれたのは、私以上に怒り、悲しみ、声を上げてくれたカウンターの人たち、新聞記者の人たち、ネットニュースの人たち、雑誌社の人たちでした。
 私は初めは自分に起きていることがわかりませんでした。
「これはおかしい」と言って書いてくれた記事をきちんと読むことができたのは、昨年の8月です。
それまでは一つ一つを精査して読むことは、恥ずかしい話ですが、…私にはできませんでした。
読みながら、日本の良心はまだある、と思いました。
小さなメディアの人たちも含めて、その人たちの力があったので、私も壊れずにここまでこれたと、本当にお礼を申し上げます。

 MXのやったことは罪が深いです。
今までネットの中であったデマを、保険をつけ、社会に飛び立たせました。
そのデマは如何に酷いものか、少しでも近代史を学んだ人ならば、少しでも目の前の少数者のことと関わった人ならば、それは容易に想像がつくものでした。
世界中のネオコンも含めてメディアがターゲットを名指しし、それに共感した人が具体的にテロ行為に及ぶ、その繰り返しでした。
 私が今日、この記者会見に出ようと思ったのは、民族団体の本部が襲撃されたからです。
去年の段階で、テロは起きるなと思いました。
それはもちろん私に起きるかもしれないし、なんらかの象徴的な人たちに対してかもしれないと思いました。
自分の周りにあるものがどんどん変わってきて、沸点がどんどん低くなってきて、かつてテポドンの時、拉致疑惑の時、様々な時に大量の暴行事件が発生しました。
一瞬のうちに沸き上がる暴力の凄まじさを体験してきています。
 そして民族団体を襲撃した彼らは、私たちがヘイトの相手として戦ってきた人です。
つまり、ヘイトからテロへと確実に時代は移行しました。
その扉を開いたのはMXです。
やってはいけないことだった、と思います。
 いま、きっちりとしたBPOからの決定が出たからこそ、彼らはまた必死になって私やBPOを叩いてくると思います。
なぜなら言論とメディアを如何に自分たちの手に持ってくるのか、それが彼らの目的だからです。
どんな手段を使っても、これからどんな酷いことを書かれるかと思います。
でも、みなさんと一緒に止めたいんです。
みなさんと一緒に、言論で止めていきたいんです。
そのきっかけをBPOがくれたことを、心から感謝します。

 いま私たちの周りにどんな状況があるのかというのを、簡単にパワーポイントにしてみたので少しだけ流させてください。(ここで画像が映されました)
 ヘイトとの闘いは私で言えば2007年からです。
花岡事件のあの時に囲まれたのが、囲まれて罵倒されながら一緒に何10mも歩いたのが初めてでした。
 ヘイトスピーチがあり、嫌韓があり、そしてこれは最近出た雑誌です。(どぎつい色と見出しの雑誌類が映されました)
全部が惨たらしい文言で彩られて、この記者は大久保を取材したいと言ってきたそうですが、しかし出てくるものは、とても一緒に多文化共生の街を作っていくような雑誌ではありません。
そして街には嫌韓本がいっぱいあり、雑誌もそういうもので語られ、塚本幼稚園では「邪な考え方を持った在日韓国人シナ人」という内容の文章が送られ。百田さんは相変わらず妄想の世界で生きていて、「北朝鮮のミサイルで私の家族が死に私が生き残れば、私はテロ組織を作って日本国内の敵を潰していく」ということは、まさにここにきている私たちのことでした。
北朝鮮の攻撃と何の関係もない日本に住む人たちを、テロ組織を作り攻撃殺傷するなどという危険思想を持つ人たちがこんなにいるのは怖いです。
 イオ信組が放火事件を受けました。
イオ信組は、いわゆる朝鮮総連系と言われています。
だけどこの放火をした人は、朝鮮総連とか韓国とか、全くわからないんです。
韓国の戦時性暴力の被害者の問題で頭にきて、同じ朝鮮人だから、一山いくらという形で放火をしました。
 そしてその他にも出自を求め蓮舫の「国籍を見せろ、戸籍を見せろ」という声も上がりました。
この時私は、夢で蓮舫に泣きながら頼んだんです。
あんたが、あんたがそれをやったら、どれだけ多くの人がその出自を問われるかわからないからやめてくれ、と夢で泣きながら言いました。
 そしてツィッターでは「朝鮮人を皆殺しにしろ」とかいろんなことがあります。
いろいろ発言するたびに後ろにくっついてくるものを見ると、本当に辛くなります。
そして今度は『いまこそ韓国に謝ろう』と言いながら、つまり笑いながら相手を侮蔑しながら叩きます。(百田尚樹の本)
 朝鮮人慰霊碑追悼文を拒否したのは小池さんでした。
私たちは、私たちの歴史そのものが、が存在そのもの否定されている社会の中にいます。
そして「北朝鮮のスパイが入り込んでいる」といったことがワイドショーでもどこでも平気で語られる。(三浦瑠璃の北朝鮮スリーパーセル発言)
 そして今度は「在日は済州島で幸せに暮らしてね」と、まさにソフトな嫌がらせで。(江川達也、ライブドアニュース)
そして今回の襲撃事件がありました。
 毎日が皆さんにとっては、ごく多くの情報の中の一つかもしれません。
でもそれは、私や出自の異なる人たちにとっては大変重い情報として届きます。

 日本社会の中で生きていて、語れる相手もなく、自分の出自を学ぶこともできず震えている子たちが、目の前に浮かびます。
その子達に、ごめんなさいって、伝えたいです。
本当にヘタレな朝鮮人の大人で申し訳ない。
あなた達を守れなくて本当にごめんなさい。
だけど頑張るから、絶望しないで。
日本には良心のある人たちがまだたくさんいて、あなたはまだ出会っていないから、だから絶望しないでいてください。
そしてごめんなさい、もう少し頑張るからとお伝えして、お礼とさせていただきたいと思います。
●参加した記者からの質問を受けて
*インターネットって、散弾銃なんです。
打ち込まれたら八つ裂きになります。
そして世界中どこへ行っても、その画像が見られます。
ヨーロッパで仕事していても、アメリカで仕事をしていても、必ず検索があります。
消すことができない。
毎回、説明しなければいけない。
そして多くの人は、それを検証する術を持っていません。
ネットで拡散されれば、必ずその次はネットをベースにして具体的な行動に移してくる人たちが、必ずいます。
それは小さな段階でもそうだし、駅で出会う人もそうだし、その数が爆発的に増えるということです。
日常生活がなくなるというのを、どうお伝えすればいいのかなぁと思います。
*私がドイツに行って一番最初に驚いたこと。
ポストを開ける時に、安心して開けられるということです。
ドイツに行って初めて、ああ、ポストを開けて何かお便りが来るっていうのは、こんなに楽しいことなのかって思いました。
 今回私が、こう心を打ち砕かれたことに関して申し上げるなら、複雑骨折みたいな感じなんです。
私自身が、なぜここまで自分が折れたのかと言うのを自分が理解するのに、まだ整理がついていません。
 ただ確かなことは、私の出自を使って、変えることのできない出自を使って、沖縄を叩いたということです。
それは自分が叩かれるよりも、何倍もこたえました。
そういう複雑骨折があちこちで起きるんです。
 普通の生活がしたい、駅に行った時にジロジロ見られたくない、ヒソヒソ語られたくない、クリーニング屋さんに行った時にシミがついていたらこれもう一度やり直してくださいと気軽に言いたい、辛って名前を書いて病院に行ったらちゃんと見てくれるのかな、インターネットの中で歯医者さんや医師を標榜する、自称かどうかわかりませんが、
その人達のヘイトもすごいです。
 つまり、あらゆる職業の人がそれをやっている。
それを真に、目の前で見る。
そうすると直接自分に言っていることではないけれど、このお蕎麦やさんに入ったら、ちゃんとしたものをだしてくれるのかな…とか。
そういう不安を抱きながら生きる…。
 私と社会の関係をいつも考えなければいけない生き方っていうのは、人一人の人生を考えたら、ものすごい酷いことなんですよ。
でもそういうことをマジョリティの人に理解してもらう言葉を、私は持っていません。
私が感じる感性を、多くのマジョリティの人にはなかなか届かないんです。
 仕事もなくなるというのは、どういうことかわかりますか。
クライアントのところに毎回と言っていいほど、嫌がらせが入り、抗議が入ります。
そのために、クライアントを支えながら仕事をしなきゃいけない。
仕事現場にくる人たち、一回や二回ではないんです、ほぼ全てです。
 そして日本人の感情のゴミ箱として自分が使われる。
韓国のことを言われたり、北朝鮮のことを言われたり、誰も私が在日で朝鮮人で韓国籍で永住権を持ってると言っても、それがなんだか全くわからない。
いつも、いつも、自分のことを説明しなければ先に進まない。
 そして自分の存在が、自分が大切にしている人を傷つけるなり、自分の子供が窮地に落ちるなんて思ったら、私だってネトウヨに愛される右翼になると思いますよ。
何をされたのかということを語りだしたらきりがない。
ただはっきりとこの歳でわかったのは、日本の社会でモノを言う朝鮮人の女というのは、ゴキブリ以下に扱われるということです。
そして多くの人たちは、それを笑いながらやるんです。
そしてまたもっと多くの人たちは、それを止める術を知らない。
ネットで叩かれること以外に、それに付随することによって壊れていくんです。
 私は…、(涙で言葉が途切れました)

 1972年生まれの沖縄の子で、栄作という名前の子がいます。
私の知人で3人いました。
最初はわかりませんでした。
二人目の時もわかりませんでした。
去年か一昨年、初めて聞きました、どうして栄作という名前がついたのか、ひょっとして佐藤栄作のこと?って聞きました。
 沖縄復帰のあの時に、自分の子供に栄作という名前をつけた親の思いや、人生や日本社会に託した願いや希望や未来を、思うんです。
どんなにこの社会に夢を持って、子供に栄作って名前をつけたのかって思うんです。
それを思うと、日本の国っていうのは、なんて酷いことをし続けるんだろうって思うんです。
一人一人の生きてきたところからその国や政治のあり方を見ていった時に、もっと優しくできるはずだと思うんです。
 それを私の出自で、しかも全部デマで、それで沖縄を叩かないでほしい。
それは酷いことなんですよ、人間としてやっちゃいけないことなんですよ
そして、(私が思う)そういうひとつひとつが、共感されない、評価されないそのこともまた自分を打つんです。

★TOKYO-MX「ニュース女子」に対してBPO人権委からの勧告に関しての記者会見は、「のりこえねっと」の川原栄一さんの司会進行で進められました。
上に記した辛さんの発言の前に、辛さんの代理人弁護士の金竜介弁護士、神原元弁護士が、経緯について発言されました。
また辛さんの記者会見に続いて、沖縄から秦 真実(やす まこと)さん、そしてMX前で毎週抗議行動を続けてきた川名真理さんが発言しました。
この「一枝通信」では、ただただ辛さんの思いをお伝えしたく、他の方の発言は記しませんでした。                            

いちえ

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