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2018年4月14日号「裁判傍聴」


◎福島原発刑事訴訟 第5回・第6回公判
 4月10日と11日、東京地裁で福島原発刑事訴訟の第5回、第6回公判が連日で開かれました。
この裁判は、東京電力福島第一発電所の元会長の勝俣恒久、元副社長の武黒一郎、元副社長の武藤栄の3人の被告に対して、事故の責任を問う裁判です。
2日間、傍聴しました。
●入廷まで
 この裁判の前回の傍聴記でもお伝えしましたが、傍聴人に対する入廷前の安全検査は、やはり異常なほどの入念さで行われました。
その有様を、もう一度記します。
 傍聴は希望者が多数なので抽選が行われ当たった人が、当たり番号が記された抽選券を持って、裁判所に入館します。
手荷物をX線探知機に通し、本人も金属探知機のゲートを潜ります。
これは空港での搭乗時の安全検査と同じです。
 手荷物を受け取って、104号法廷に向かいます。
法廷入口手前の廊下で待機している係官に当選番号の記載された抽選券を渡し、傍聴券を受け取ります。
 今度はそこで傍聴券を見せて手荷物を預け、預かり証の札を受け取ります。
入廷の際に持ち込めるのは筆記用具、財布、ちり紙、ハンカチだけですから、手荷物を預ける際には、それらを鞄から出して手に持ちます。
そして安全検査を受けるのです。
 さてこの安全検査が酷いのです。
手に持った筆記用具などを係官が差し出したトレーに入れると、別の係官が金属探知機で体の前面と背面を検査し、腕時計は文字盤の側と留め具の側と両面を確かめます。
金属探知機での検査は通り一遍ではなく、頭上から足元まで、開いた両手の肩から指先まで、“バカ”丁寧にあたります。
次に女性は女性係官の、男性は男性係官の前に進み係官が両手の平で体に触って(もちろん衣服の上からではありますが)チェックするのです。
首筋に触られ首から胸腹部、背中側も触り胴回りも手でぐるりと触り腕も肩から手首まで、両足も腿から足首までを手で触れての検査です。
 こうした検査を受けるのもこの裁判を傍聴するようになってからのことで、もうこれまで何度か受けていますが、最初の時よりも更に時間をかけて念入りな検査になっているように思えます。
一言で言えば非常に心地悪い、不愉快な検査です。
最初の時に係官に「いつもこうですか?」と尋ねたら、「裁判官からのお達しです」と返事がありました。
女性係官の制服は紺色で、同じ紺色のケピ帽(円筒形の胴に平らな天辺、水平の庇がついた帽子)をかぶっています。
男性係官は帽子は被らず、制服は国防色(古い言葉ですが、なぜかここではカーキ色とか濃緑色と呼ぶよりも、こういう呼び名が思い浮かびます)で、それもとても気持ちが悪いです。
こんな色の制服を着た、がたいの大きな男たちが10人ほど立っているところで入廷まで待つだけでも、気持ちが悪いのです。
彼らは裁判所の職員なのでしょうか?
女性と男性では制服の色も形も違うので、所属も違うのかもしれません。
 国防色の制服の一人に「ずいぶん念入りな検査ですが、やり方にマニュアルがあるのですか?」と問うと、「はい、あります。その通りに実行しています」と得意満面で答えました。
 この日はこうした検査法に、抗議の声もずいぶん上がっていました。
弁護士や検事経験のある議員に、この様子を見てもらったらいいのではないかという声も上がりました。
民主主義国家とは思えない、異常な安全検査です。

●10日、第5回公判
 第5回公判の証人尋問では、東電の現役社員の高尾誠さんが証言台に立ちました。
高尾さんは東京電力本店の土木部門で、津波や活断層の調査を担当していた人です。
検察官役の指定弁護士、神山啓史弁護士の質問に高尾さんが答えていきました。
*高尾さんの話
 推本(地震調査研究推進本部)が2002年7月に発表した長期評価では、福島沖の日本海溝沿いでマグニチュード8級の津波地震が起きうると予測し、津波高は15,7mと計算していたが、高尾さんたち東電本社の土木調査グループは2007年11月以降、津波対策(福島沖M8級地震への対策)をとろうと考えていた。
2007年7月の中越沖地震で東電柏崎刈羽原発で火災が発生し、東電が批判にさらされたが、この時の記者会見に高尾さんも臨んでいた。
 推本の長期評価は地震学者のアンケートでも過半数が支持をしていたことなどから、東電土木グループも長期評価を取り入れて、確率論で研究を進めていた。
推本の長期評価を他の電力会社も検討しており、東通原発の設置許可申請でも長期評価を取り入れていた。
 2008年2月の社内「御前会議」で、津波対策について長期評価の報告をした。
(注:神山弁護士の「なぜ御前会議と呼ぶのですか?」の質問に高尾さんは「勝俣社長が出席する会議だからです」と答えた)
その場で決まらずに、15,7m津波高について土木部会に4つの宿題が出された。
そのことから、上層部も対策を前提に進めていると高尾さんは考えていた。
ところが2008年7月に開かれた前回出されていた宿題について話す会議は、僅か50分という短さで、そこでは質問もせずにただ聞いていただけだった武藤副社長が、最後の数分で「研究を実施しよう」と、津波対策の先送りを告げた。
それまでの状況から当然津波対策を進めると予想していたのに、このような結論になって、頭が真っ白になり力が抜けた。
 上司の酒井俊朗さんは他の電力会社に。推本の長期評価を取り入れるには時期尚早と考えると伝えた。

☆10時から5時まで、途中昼休みと午後に1回の休憩を挟んで長帳場の法廷でしたが、
東電の土木グループ技術者は、津波対策を検討しその旨上層部に報告したにも関わらず、それが反故にされたことが明らかになった法廷でした。
 昼休みや午後の休憩を終えて再度入廷する際には、上記したような安全検査を再度受けるのです。

●11日、第6回公判
 11日もまた高尾誠さんの証人尋問でした。
午前中、そして午後の前半は検事役の神山弁護士が質問しました。
午後の後半は、被告弁護側の宮村啓太弁護士が質問しました。
*神山弁護士の質問への高尾さんの話
 2010年8月に東電社内に「福島地点津波対策ワーキング」という組織が作られた。
これは本店の吉田昌郎部長(原子力設備管理部)のもとに、土木調査グループ(高尾さん所属)、機械耐震技術グループ、建築耐震グループなど津波対策に関わる部署が参加して立ち上げられた組織だ。
 これは高尾さんが2009年に一度提案したが上層部の拒否にあい断念していたが、改めて立ち上げた組織だ。
2008年から検討されていた津波対策は、各部署がバラバラにそれぞれ自分の部署に関わる仕事内容で検討していたのを、高尾さんは全体が判る人がキャップになって有機的に結びつけて検討する必要があると考えて上司に進言したのだが、それは不要だと拒否されて甘受するしかなかった。
 2010年に高尾さんはグループマネージャーになり、直属の上司らも交代していたので、再び高尾さんはワーキングを提案し、受け入れられて発足した。
 平安時代に起きた貞観地震(マグニチュード8,4)の津波堆積物を解析した佐竹論文は、貞観地震は福島県沖で起きたと推定していた。
この論文を入手した東電は、この地震による福島第一への津波高は9m前後になると計算した。
高さ10mの敷地にある原子炉建屋までは津波は遡上しないが、海岸沿いにある非常用海水ポンプは水没して機能しなくなることが判った。
 東電は「まだ研究途上で、どこで地震が起きたか確定していない」として、津波想定に取り入れないことを決め、東北電力など近くに原発がある電力会社に伝えた。
女川原発の津波想定に、佐竹論文を取り入れることを決めていた東北電力は、報告書にこれを取り入れるのは不都合だろうかと東電に問い合わせた。
東電は「同一歩調が望ましい。女川では貞観津波を想定するというのなら『参考』として提示できないか」と東北電力に伝えた。
 東北電力は東電の言う通り、貞観津波については「参考」とした。
東電は他社の津波想定を自分たちの水準まで引き下げようとし、他社もまたそれに従ってしまった。
*宮村弁護士による反対尋問
 2002年の推本による長期評価での津波地震の津波よりも東日本大震災時の津波の方が大きいから、長期評価に備えた対策では事故は防げなかったと言う被告の主張に沿った尋問で、また津波も南側からしか寄せないと主張するもので、これらの質問からは新たな事実は示されなかった。

●次回第7回公判は4月17日です。
第7回の証人尋問も、高尾誠さんが証人台に立ちます。
次回の公判で、更に明らかにされていくと思います。
 私は15〜18日と沖縄に行くので17日の傍聴はできないのですが、福島原発刑事訴訟支援団FBで、公判の様子を理解しようと思います。
 沖縄行は那覇のブックカフェ「ゆかるひ」オーナーの友人に、チベットと福島のことを話しての依頼を受けて行くのですが、チベットと福島そして沖縄は、私の中ではその根は分かち難く一つのものと思えてなりません。
トークの会に参加した方たちと、また思いを一つにできたらと願っています。
●明日14日は国会前へ!
 *14時から「総がかり行動実行委員会」集会
 *その後「未来のための公共・元SEALDS」による集会
 *18時から「アベ政治を許さない」キャンドル・デモ
国会前でお会いしましょう!!                

いちえ

 

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