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2018年6月22日号「裁判傍聴 6月20日福島原発刑事訴訟」


◎第18回公判
 20日(水)、福島原発刑事訴訟の第18回公判が開かれました。
東京電力の原子力設備管理部の金戸俊道さんが証人として、検察官役指定弁護士の渋村弁護士の尋問を受けました。
 金戸さんは平成8年に東電に入社し、津波対策を統括するグループに配属されグループマネージャーだった酒井さん、津波対策に中心的役割を担った課長の高尾さんの下で津波高の計算や他社との連絡などの実務にあたっていました。
●証人尋問、金戸氏証言
 酒井氏あるいは高尾氏から福島原発のバックチェックをするよう言われ、東電設計の久保氏と打ち合わせを行い、久保氏からバックチェックには地震本部の長期評価を取り入れないとまずいのではないかと、アドバイスを受けた。
この件を上司に報告した記憶は定かでないが、報告はしたと思う。
 長期評価は国のトップの学者たちがまとめた意見だから、これをとりいれずに安全審査が妥当だと評価されることはないと思っていた。
※これは酒井氏も高尾氏も同様に証言しており、津波対策を担当する現場では共通の認識だったことが改めて明らかになった。

 平成20年3月に、「長期評価」に基づいて最大15,7mの津波が襲うという計算結果をまとめ、沖合に防波堤を設置した場合などを検討し、6月には高尾氏とともに武藤副社長に報告をした。
 しかし7月に、武藤副社長は「さらに研究を続ける」と告げた。
これは時間をかけて検討するという経営判断だと思い、それには従うべきだと考えた。
長期評価では福島沖の巨大津波を伴う地震は絶対に起きるとは言えず、津波の高さや安全審査に通らないリスクも伝えて報告したつもりだったが、絶対に起きるかどうかわからないものについての経営者の判断だと思い、社員は従うべきだと思った。
長期評価を取り入れるかどうかは土木学会に研究が委託されたが、いずれは対策が必要になるだろうと思っていた。
 津波対策の実務担当者として他社と何度もやりとりをし、平成19年の会合では「三陸沖から房総沖の領域のどこでも巨大津波を伴う地震は起きうるとする長期評価を明確に否定する材料がないとすれば、長期評価を取り入れざるを得ない」と説明した。
これに対して女川原発を持つ東北電力の担当者は、「地震が三陸沖と福島県沖をまたいでで起きる波源モデルは考慮しないことにすれば、対策は取らずに済む」と言ったが、「それは難しい」と答え、電力会社間でも長期評価の取り扱いは議論になっていた。
平成20年には東海第二原発を持つ日本原電の津波担当者から、「主要施設設備建屋も浸水」「当社も非常に厳しい結果」などと書かれ防潮壁の設置や建屋の水密化などの対策を検討している旨が記されたメールが届いた。
 このように電力会社間で長期評価に関して議論は交わされてきたが、東電が対策を保留したことを受け、各社は共同で土木学会に研究を委託した。
※尋問の終わりころになって渋村弁護士から、3・11の地震の時にどう思ったか、対策を取っていれば事故を防げたと思うかを問われると、証人は次のように答えた。
「あの対策をしていたら今回の事故を防げたかどうか考えても、防げなかったと思う。
自分は地震直後は福島原発はあまり心配にはならず、まず女川原発が心配だった。
震源の範囲が長期評価と違いすぎていたからだ。
後で解析したが、波の遡上パターンが長期評価とは全然違うので、長期評価に基づいて津波対策を取っていても、事故は防げなかったと思う」
●この日の傍聴で思ったこと
 証人の金戸俊道さんが入廷した時の様子は、これまでの証人の誰よりも緊張しているように私には見えました。
証人席に座るのをとても恐れているように思えました。
最初に立って宣誓文を読み上げますが、その声も小さくはっきりとしていませんでした。
その後の証言は椅子に座ってマイクを通して話します。
 渋村弁護士の尋問に答える時「覚えていませんが、したと思います」というような「記憶にないが、そうだったと思う」のような言い方が午前中はとても多かったです。
けれども裁判長は身を乗り出すようにして、証人の言葉にしっかり耳を傾けていました。
私は、証人席に座るのはとても重圧感のあることなのだろうと思い、裁判長の姿勢にしっかりと聞いてくれていることを感じていました。
 午後になると金戸さんはだいぶ緊張もほぐれたようで、言葉もはっきりとして「覚えていませんが」とか「記憶にないですが」と言う言い方はほとんどなくなりました。
いつも傍聴席が隣同士のKさんとお昼をご一緒したのですが、その時にKさんも「『覚えていない』がすごく多いから、何回言ったか、数えたの」と言い、午後もKさんと隣同士に座ると、彼女は午前中に途中で気が付いて数えだし線を引いて正文字で数えていたのが、午後にはあまり線が引かれなくなっていました。
 そして午後も尋問が進んで、それまでは地震調査研究推進本部(推本)の長期評価に沿って対策をとるように現場では報告していたのに上層部がそれを怠ったという方向で証言をしてきた証人は、まるで「イタチの最後っ屁」のように、最後にあのような「長期評価に沿って対策をしていても防げなかった。長期評価と実際の津波遡上パターンが全然違う」という証言をしたのでした。
 それを聞いて唖然としたのは私だけではなく、傍聴していた仲間たち皆同様でした。
閉廷後の報告会で、被害者参加代理人の海渡雄一弁護士から、次のような説明がありました。
「検察側の証人尋問で何を聞くかは、予め証人には伝えられて証人はそれに対して答えていくので、検察側の調査に沿って打ち合わせ通りに証言をしていくが、最後のあの尋問は打ち合わせになかったことなのでしょう。だから証人は思ったままを言ってしまったのではないか」
 これを聞いて私には、裁判というもののあり方がまた少し判ってきました。
今回の裁判には当たりませんが、冤罪が起こる土壌のようなものが刑事訴訟にはあるのだとも思いました。
 そしてまた別のことですが、この日の裁判ではこんなことも思いました。
裁判長が、いつになくしっかりと証人の言葉に耳を傾けているように感じましたが(これはもしかすると私だけの感覚かもしれないとも思いますが)、もしかしたらこの証人は被告側に有利な証言をするだろうことを知っていて(つまり被告側弁護士と何らかの意思疎通があって)よく聞こうとしていたのでは?などと勘ぐっている私でもあります。
本来裁判には、そんなことはあってはならないでしょうし、私のゲスの勘ぐりなのかもしれませんが、裁判官は内閣に任命権があることを考えると、こんなゲスの勘ぐりも浮かんでしまうのです。

いちえ

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