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2018年7月17日号「南相馬・避難20ミリシーベルト撤回訴訟」


 7月12日(木)、東京地裁第103号法廷で、件名の裁判の口頭弁論がありました。
裁判長と右陪審が交代して2回目の口頭弁論期日でした。
原告側から3本の準備書面が提出されて、原告の佐藤さんと原告代理人の福田弁護士が説明に立ちました。
◎この裁判について
●これはどんな訴訟か?
 2014年12月、政府は南相馬市の特定避難勧奨地点について、年間積算被ばく線量が20ミリシーベルトを下回ることが確実になったとして、避難勧奨地点を解除し、その後順次支援策や賠償を打ち切りました。
 特定避難勧奨地点とは避難指示区域に含まれないものの、積算線量が20ミリシーベルトを超えるとされる、いわゆるホットスポットのことで、南相馬市の山沿いにある原町区片倉、馬場、押釜、高倉、大谷、大原地区、そして鹿島区の橲原(しではら)、上栃窪地区について、地域内の世帯ごとの特定地点を設定して避難を勧奨したのです。(2014年10月現在142地点、152世帯)
地点に指定されていた世帯や近隣の合計808名が解除の取り消しを求めて国(原子力災害対策現地本部長)を相手取って提訴しました。
●訴訟での原告の主張
 原告は、20ミリシーベルト基準での特定避難勧奨地点の解除は、次の3点において違法であると主張して、解除取り消しを求めています。
⑴講習の被ばく限度が年間1ミリシーベルトを超えないことを確保するべき国の義務に反する。
⑵政府が放射線防護の基準として採用している国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に反する。
⑶政府が事前に定めた解除の手続き(新たな防護措置の実施計画の策定、住民等の意思決定への関与体制の確保)を経ることがないまま解除を強行した。

◎7月12日口頭弁論
●佐藤さんの意見陳述
 解除手続きの違法性について、住民の意見が無視されたまま進められた実情を具体的
に訴えました。
 被告は「賛否を含め様々な意見や要望があり得る中、住民らの意見や要望を全て取り入れられるものではなく」と言うが、本件においては大多数の住民が反対している状況であるから、それらの意見を反映し、真摯に検討の対象とすべきであるのに、解除に反対する住民の意見は全く考慮されなかった。
 第一に、当初解除の予定は平成26年10月中とされていたところ、住民に対して初めて説明会が開催されたのは平成26年10月8日であり、解除まで3週間を切った日程だった。もはやこの説明会において出た意見を「真摯に検討」する時間はなく、住民らの意見を真摯に検討する意図が全くなかったことは明らかである。
 第二に、平成26年9月26日には、「解除時期について、特に生活の節目は考慮しない」「心情では理解させていただいているつもりではあるが、解除の時期の再検討は考えていない」との発言もあった。
平成26年10月11日には、「子どもを守りたい」との思いで除染を求めた住民に対し、現地対策本部は、「心配なら掃除で対応」「農地、道路の除染を終了させてから解除すべきというご指摘に関しては、特定避難勧奨地点の指定は面的な避難指示を出す場所ではなく…」と回答している。
これは、住民の不安の理由や生活についてなんら耳を傾けていないことを示す事実である、真摯な検討をする意思すら有していなかったことは明らかである。
 第三に、被告は、「賛否を含め様々な意見や要望」と主張するが、行政区長の説明会においても住民の説明会においても、賛成意見が出た記録などどこにもない。
後藤副本部長は、現地訪問で賛成の意見もあったような発言をしているが、現地にて賛成意見があったという記録は存在していない。
にも関わらず本件解除を強行したことは、住民らの意見を全く考慮せず、真摯な検討をしていなかったことを示すものと言わざるを得ない。
 従って、住民、地方自治体が関与できる枠組みを構築せず、住民、地方自治体の意見をなんら真摯に検討することなく行った本件解除には手続き的違法があることは明らかである。
●福田弁護士の意見陳述
 本件解除の違法性について、主張しました。
 原子力安全委員会の「放射線防護に関する基本的な考え方」として、ICRPの勧告の内容をほぼそのまま引用し、特に現存被ばく状況においては、現存被ばく状況において適用されるバンドの年間1〜20mSvの下方の線量を参考レベルとして選定し、長期的には年間1mSvを目標とするよう述べている。
原災本部長による権限行使は、当然に原子力安全委員会の意見を基準としてなされなければならない。
 被告の主張は、原子力安全委員会の原災法上の位置付け、および原子力安全委員会によるICRP勧告の取り入れについて無視したものであり、失当であるとして、ICRP勧告が解除の際の基準を構成すること、そしてICRP勧告違反があること、土壌中の放射性物質についても考慮されるべきであることを主張しました。
 そしてまた、放射線の健康影響に関する主張を述べました。
本件解除に当たって参照にされる科学的知見として、LNTモデル(放射線被ばく量がどれほど少なくても、その線量に比例して人体への影響があるとする考え方)は、放射線の健康影響に関する科学的証拠に照らして適合的であると主張しました。
●被告は
 第12会口頭弁論期日に向けて被告からは、書面の提出も意見も出されませんでした。

*原告佐藤さんが意見陳述を終えると、期せずして傍聴席から拍手が起こりました。
すると裁判長は、拍手を制しました。
傍聴席から拍手が起き、裁判長がそれを制するのはこれまで他の裁判でもよく体験していました。
つまり、自然発生的に拍手は起きてしまうのですし、裁判長としてはそれを制したいのでしょう。
ところがこの日は、裁判長が「拍手はしないように」と言ったその直後に、傍聴席の一隅からまた拍手をした人がいました。

◎報告集会
 閉廷後、参議院議員会館で報告会が開かれました。
●挨拶:原告団長の菅野さん
 特定避難勧奨地点に指定された8行政区は、子どもがいない、若い人がいない。
空間線量は低くなってきましたが、土壌の線量は高い。
やっと、申し込めば土壌線量も測ってもらえるようになりましたが、例えばキノコなどは最初の頃よりももっと線量が高くなっている。
 そうした中で若い人が帰ってこないですから、農業後継者はいない。
耕作放棄地が増えている。
畑地を除染して山土を入れたところでは、牧草の種をまいても芽が出てこない。
つまり農地も崩壊。
 同じ行政区内でも、特定避難勧奨地点に指定された家と指定されなかった家もあるため、地域が分断され行政区が崩壊した。
家族も分断されて崩壊、大自然も崩壊、病院も看護師がいなくて、80歳過ぎた人で資格を持つ人が働いているような状況です。
●福田弁護士
 今回の内容について説明された後で、傍聴席からの拍手について触れました。
自然発生的拍手は構わないが、裁判長が制した後でもう一度拍手が起きたが、あの行為はこの裁判を進めるにあたってはこちらの不利になることを説明されました。

*この日、傍聴席は埋まらず空席もありました。
感覚での発言は控えたいとは思いますが、この裁判長はなんとなく「食えない」人のように感じられます。
傍聴席を埋め尽くして、司法を監視する姿勢で裁判を見つめていきたいと思います。
どうぞ、次回の口頭弁論にご参加ください。              

いちえ

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