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2018年8月5日号「安保法制違憲国賠訴訟第8回口頭弁論①」


 大変遅くなりましたが、7月20日の裁判傍聴記です。
報告会まで含めてかなりの長文になりますが、分割してお送りします。
ぜひお読み下さいますよう願っています。       

いちえ 

7月20日、東京地裁第103号法廷で、「安保法制違憲訴訟 国家賠償請求」事件の第8回口頭弁論が開かれました。
この日も東京は猛暑の真夏日でしたが、傍聴席は埋まりました。
私は原告席に座りました。
◎第8回口頭弁論
 裁判長から、提出されている準備書面についての確認があった後で、原告代理人の福田衛弁護士、古川健三弁護士が、それぞれ意見を述べました。
●「法的保護利益の問題について」:福田衛弁護士
⒈「国家賠償法上保護された利益」とはなにか
 被告は、原告らが安保法制法の制定によって侵害されたと主張する権利ないし利益は、「法律上保護された利益」ではないから主張自体が適切でないから国家賠償は棄却されるべきだと主張し、新安保法制法の違憲性という確信の論点についての議論を回避しようとしてきた。
 しかし、「法律上保護された利益」とは何かを、被告は明確に説明できていないし、その有無の判断基準らしきものも提示できていない。
 また、被害が主観的な不安感や危機感であっても、それだけで法的保護利益性が否定されるべきではない。
例えば被告は、原告らの人権侵害の主張に対し、戦争やテロの危険にさらされるのではないかという「漠然とした不安感を抱いたという域を超えるものではない」「かかる程度の内容を持って具体的権利性が認められると解する余地などない」と主張するが、不安感や危機感を抱かされない利益も、れっきとした利益であり、最高裁判例でも法的利益たることが認められている。
「漠然とした」とか「域を出ない」とか「かかる程度の」というのは特定の立場からの評価に過ぎず、だから法的保護に値しないと決め付けることはできない。
⒉原告らの被害は新安保法制法によって作り出された客観的事実によるものであること
 原告らの戦争やテロへの恐怖、不安、危機感、自分の人格が傷つけられた苦痛は、原告らの政治的信条やものの見方や考え方によるものではない。
あるいは、新安保法制法が成立して主義主張が通らなかったことに対する憤怒の情や、挫折感、焦燥感とも全く異なる。
 原告らの精神的苦痛は、新安保法制法という日本国憲法上許されない立法行為が、集団的自衛権行使の禁止及び海外派兵の禁止という憲法上の禁を犯し、日本の国と国民を戦争とテロに巻き込む危険を一挙に拡大したという客観的事実により根拠づけられている。
現に新安保法制法の適用により、南スーダンでは自衛隊の部隊がいつ殺傷や戦に直面するかわからない状況が出現し、あるいは自衛隊の護衛艦に米軍の補給艦の武器等防護が発令されて日本は北朝鮮との極度の軍事的緊張の対立当事者となった。
原告らはこのような客観的事実の下で、それぞれの戦争体験や社会的立場に応じて、戦争の再来におののき、苦難の人生の支えを失い、生涯をかけた平和な街づくりや平和への職業的使命を妨害されるなど、各人固有の人格の侵襲を受けているのである。
⒊主観的利益の重要性と本件侵害行為の重要性
 これまでの最高裁判例でも、平穏な日常生活を送る利益、焦燥や不安を抱かされないという利益、内心の静穏な感情を害されない利益、良好な景観を享受する利益なども法的保護の対象となることが明らかにされている。
近事の下級審裁判例でも、人の精神に対する侵害や環境への侵害など非物理的侵害が不法行為法理上重要性を増し、「人格権の主観化」が進んでいることが指摘されている。こんにち、人格的利益を中心に不法行為法の保護利益が拡大し、不法行為の成立が全く否定される利益は多くないことが広く指摘されている。
 不法行為の成立は、侵害行為の態様・程度と被侵害利益の種類・性質との相関関係の下で、総合的に判断すべきとする定着した判例法理の下で、明確な根拠も判断基準もなしに「法的保護に値しない」として救済の入り口で排除するような取り扱いが決してなされてはならない。
 圧倒的多数の憲法学者、元内閣法制局長官や元最高裁裁判官らがこぞって指摘するように、明らかに憲法9条に違反する新安保法制法の制定という異常で重大な本件侵害行為が存在し、かつ、それによってこの国と原告他国民が直面させられている戦争への危険という客観的事実が存在する。
この客観的状況を直視し、その内容を解明し、その上に立って原告等の権利と利益の侵害の深刻さを正面から受け止めることなくして本件を裁く司法の役割は果たし得ない。
●「証人採用について再度の意見・要旨」:古川健三弁護士
 本件における証人尋問の必要性について、これまでにも再三にわたり意見を述べてきたが、これまでの意見を踏まえ、半田滋氏、前田哲男氏、西谷和文氏についてその必要性を述べる。
 被告は、原告の証人尋問申請に対し、「具体的な権利ないし法的利益を離れて」意見、法的評価を述べるに過ぎないと主張している。
しかし法的保護に値する権利ないし法的利益があるかどうかは、原告らの訴えだけから判断されるべきではない。
新安保法制法の制定行為それ自体の違法性や、これがもたらした客観的な状況の変化に関する事実は、被侵害利益の有無と程度を判断するために必要不可欠だ。
 原告らは市井に生きる一般市民であり、体験した事実の範囲は限られている。
これに対し新安保法制法は10件の法改正と国際平和支援法の新規立法を含む大幅な法整備で、従来の政府の憲法解釈を逸脱するものであるため、その影響はきわめて多方面に及ぶ。
新安保法制法がもたらす客観的な危険性は専門的な知見による立証が不可欠だ。
 原告らは、本人尋問でそれぞれの体験や職業的知見、社会的立場を踏まえて語った。
原告らが供述した戦争への恐怖、テロの危険、平和の喪失は個人の体験を通したものだ。しかしそれらの恐怖や危険は、客観的な事実に裏付けられたものだ。
原告ら個人の体験と、新安保法制法がもたらした自衛隊の変化や日米軍事同盟の変化などの客観的事実は一体不可分、表裏一体だ。
これまでの原告本人尋問では、まだ前者が語られただけだ。
これからさらに、専門的な知見を有する証人尋問によって、原告らが語る危険性の根拠となる客観的事実を明らかにしなければならない。
 以上を踏まえ、ここでは特に半田滋氏、前田哲男氏、西谷文和氏の証言の必要性を再度述べる。
*半田滋氏
 半田氏は、現実に紛争地帯に身を置いて取材を続けてきた経験を持つジャーナリストで、新安保法制法の危険性を判断するために必要不可欠な知見を持つ。
 本件で提出している原告本人の意見書にも、半田氏の著書が度々引用されている。
憲法学者が法的評価を行う上でも、半田氏の具体的な体験に基づく知見が不可欠だ。
*前田哲男氏
 前田氏には、自衛隊や在日米軍の実態、それらの変容について、詳細な取材に基づく多数の著述があり、原告意見書にも引用されているし、また、すでに提出している新聞記事にも前田氏のコメントを掲載するものが少なくない。
前田氏の取材活動によって得られた事実体験と知見は、新安保法制法が原告らにどのような危険をもたらしているか判断するために不可欠だ。
*西谷文和氏
 西谷氏はフリージャーナリストであるとともに、NGO代表として、イラク、シリア、南スーダンなどの紛争地帯で救援活動を行っている。
海外で自衛隊を見る目がどう変化しているか、新安保法制法がどのように国内外でのテロの危険性を高めたかについて、国内にある原告が説明することは困難だが、西谷氏はそれら紛争地帯で活動した実体験を通じて語ることのできる数少ない人物であり、その証言は本件の心理に不可欠だ。
 民事訴訟は、裁判所が必要でないと認める証拠を取り調べないことも認めているが、しかし「必要」かどうか何の基準もなく無原則に判断することは許されない。
 新安保法制法というこれまでの憲法解釈を根底から覆す立法が、憲法改正手続きにもよらずに行われたのが本件事案だ。
その社会的影響は極めて多方面に及び、国外にまで影響を及ぼしている。
原告らの主張が単なる漠然とした不安感や焦燥感に過ぎないのかどうか、それらは原告らの個人的な体験だけではなく、それぞれ証人の体験や知見を通じてこそ判断できる。原告らが申請する証人はいずれも原告らの体験を補完して客観的な危険性を語りうる人物だ。
いずれ証人尋問も、本件の争点に深く関わるものだ。
万一、裁判所が原告らの証人尋問をすべて却下するなら、重要な証拠方法を却下したものとして、審理不尽になると言わざるを得ない。
 証人尋問の採用を改めて求める。
●裁判官合議
 二人の弁護士が意見陳述をした後で、3人の裁判官は「合議をします」と言って退出しました。
そして、ものの数分も経たぬうちに戻ってきて言い放ったのです。
「合議の結果、証人は採用しません」
 原告席、傍聴席からは、一瞬息を呑んだように悲鳴のようなため息がもれました。
すかさず弁護団長の寺井弁護士が挙手して忌避申し立ての意見陳述を求めました。
●「裁判官を忌避します」:寺井一弘弁護士
 4月に裁判官が3人とも交代したことの不自然さを言い、これまでの裁判官は、同じこの東京地裁の民事部にいて他へ移動にはなっていないことにも言及し、この交代劇の裏にはなんらかの意図があるのではないかと追及しました。
そして「証人採用せず」の不当な採血をした裁判官を「忌避します」と宣言したのです。
 原告席、傍聴席からは割れるような大きな拍手がわきました。
 裁判官は「閉廷します」と言いましたが、そこここから声が上がったのです。
「人でなし!」「それでも裁判官か!」「恥を知れ!」「戦争法なんだぞ!解ってるのか!」
「憲法違反だぞ!」「税金泥棒!」
 次々に上がる声に裁判官は「閉廷しました。退出してください。部屋から出てください」と言いますが、誰も席を立ちません。
声は鳴り止まず「それでも人間か!」「「憲法違反の法律だぞ!」「証人を採用しなさい!」
いつもなら「閉廷」の声とともに裁判官は立ち上がり、同時に法廷内の全員が立って礼をして、裁判官はさっさと退出するのですが、原告席からも傍聴席からも抗議の声が上がり続け、裁判官も席を立てずに座ったまま「退出してください」を繰り返しました。
 が、そうしていても埒があかず、私たちは憤りと悔しさを抱えたまま席を立ったのでした。

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