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2018年8月7日号「福島原発刑事訴訟第21回〜第23回公判傍聴記」


 福島原発刑事訴訟の公判は7月24日に第21回公判、25日に第22回公判、27日に第23回公判が開かれました。
●第21回公判(7月24日)
 証人は東電設計の安中正(あんなかただし)氏で、検察官役の石田省三郎弁護士が質問していきました。
安中氏は地震の専門家で、土木学会の津波評価部会では幹事役として土木学会の実務を取り仕切ってきた人です。
石田弁護士は安中氏に、福島第一原発は「確率論的津波ハザード解析」ではどのように評価されているのかを質問していきました。
 土木学会の津波ハザード解析の研究成果によって東電設計が2004年にまとめた報告書では、1万年に1回くらいの確率で津波高が7〜8mになることがわかりました。
土木学会はその後も研究を続け、東電設計はそれをもとに2009年に再度津波ハザード解析を実施、そして新たに貞観地震を考慮に入れて1万年に1回レベルの津波高は、11,5mとなることが判り2010年5月に東電に報告されました。
この結果を聞いた東電の高尾氏は安中氏に、「一桁程度低くならないか」と発言したことが明らかにされました。
 地震本部の長期評価について土木学会は津波ハザード解析の基礎資料として、2004年度と2008年度に専門家にアンケートをとりました。
2004年度のアンケートは、①「過去に発生例がある三陸沖と房総沖で津波地震が活動的で、他の領域は活動的でない」②「三陸沖から房総沖までのどこでも津波地震が発生するという地震本部と同様の見解」で聞いたところ、地震本部の見解を支持する回答が上回っていました。
2008年度は①「三陸沖と房総沖のみで発生」②「津波地震はどこでも発生するが、北部に比べ南部は津波が小さい」③「津波地震はどこでも発生し、北部と南部も同程度の津波地震が発生する」の設問でしたが、「津波地震はどこでも発生する」という②と③
への回答が過半数でした。
安中氏は2004年度には①の「三陸沖と房総沖で」に回答しましたが、2008年度には「どこでも津波が起きる」と考えが変わりました。
その理由として2004年のスマトラ沖地震や貞観地震の調査などから地震本部の長期評価を否定できないと思うようになったようです。
 津波ハザードについては最も詳しいと思われる安中氏の尋問からは、ハザード解析をすれば敷地高さを超える綱海を想定しておくべきだという結論が出ていたことが、明らかになりました。

●第22回公判(7月25日)
 22回公判の証人は電力中央研究所の松山昌史氏で、検察官役の神山啓史弁護士が質問しました。
 松山氏は1999年の土木学会津波評価部会の立ち上げ時から、幹事として関わっていました。
土木学会津波評価部会は2002年に津波想定の方法をまとめた「原子力発電所の津波評価技術」を策定しましたが、コストも人手もかかるから改定は10年に一度くらいにしようという同意があったことを証言しました。
これに対して神山弁護士が、新しい知見が出てきたらどうすべきだったかを問うと、新しい知見は毎年出てくるので、そうした色々な評価を検討材料にしてチェックは必要だと答えました。
 以前の裁判傍聴報告でも記しましたが、津波対策を練ってその報告をした2008年7月31日の会議で武藤氏の「ちゃぶ台返し」発言によって、対策は先送りされたのです。
武藤氏の、「研究を続け第三者の研究に任せよう」という言葉で対策がとられずに先送りされたのですが、この時に提案された「第三者」というのが土木学会でした。
 土木学会のメンバー委員、幹事30人の内、13人は電力会社社員、3人が電力中央研究所員、1人が東電設計で、過半数が電力関係者です。
こうしたメンバーを見れば、土木学会が第三者だとは思えません。

●現場検証を求める意見陳述
 22日の公判期日では、証人尋問の後で検察官役の久保内浩嗣弁護士が裁判官に対して「事故現地の現場検証を行うよう求める意見陳述が行われました。
 本件の争点の一つは被告人らに「事故を予見することができたかどうか。予見できたとしたら結果を回避できたかどうか」です。
この争点の判断には、事故発生の経過を具体的、現実的に理解することが不可欠です。
そのためには、同発電所を直接見聞して、どのような地盤に設置されているのか。地盤上にはどのような設備があるのか、津波はどこまで襲来しどんな痕跡を残しているのか、それらを裁判官の五感で検証する必要があります。
 現場に臨めば本件原子力発電所が、いかに海面に接した場所に設置されているか、津波の襲来に対する十分な対策が必要であったかが一目でわかります。
本件について正しい判断をするには、本件原子力発電所の検証が必要不可欠です。

●第23回公判(7月27日)
 証人は安保秀範氏で検察官役の久保内浩嗣弁護士が質問しました。
安保氏は東電入社後日本原電(日本原子力発電)に出向し、2007年10月〜2009年3月まで原電の土木グループのグループマネージャーとして、東海第二の耐震バックチェックに関する業務を担当していました。
 安保氏は、東電の高尾氏が東北大の今村教授から「福島県海溝沿いで大地震発生は否定できないので波源として考慮すべき」という意見を聞いたという報告を受けて、東電が地震本部の長期評価を受け入れて対策を練ることを理解しました。
2008年3月の日本原電の常務会では、バックチェックにおいて津波地震の予測については福島県海溝沿いで発生の場合の評価結果を求められる可能性が高いことが報告されました。
津波対策を考慮する東電の判断に倣って日本原電は、防潮壁を設置した場合の敷地浸水をシミュレーションするなど、対策に動き始めていました。
ところが東電では、2008年7月31日に会議で武藤氏の「ちゃぶ台返し」によって、対策は先送りという方針変換となったのです。
 東電の先延ばしの判断を聞いて日本原電の取締役開発計画室長は、「こんな先延ばしでいいのか」「なんでこんな判断するのだ」と、発言したそうです。
検察の聴取に安保氏は、東電の酒井氏に方針が変わった理由を尋ねると、酒井氏は「柏崎刈羽も止まっているのに、これに福島も止まったら、経営的にどうなのかって話でね」と答えたと話しています。
 この点について検察官役の久保内氏が質問すると安保氏は、その時の酒井氏の発言について「今の記憶ではない」「その時はそういう風に思ったということだ」と言い、明確に認めませんでした。
 この日の尋問で明らかになったのは、原電の次のような施策です。
・東電が対策を先送りした2008年8月の段階で、地震本部の津波地震による津波については引き続き検討を続ける。
・バックチェックは茨城県津波でやる。
・津波対策については耐力に余裕があるとは言えず、バックチェックの提出時点で対策工事が完了していることが望ましい。
茨城県の波源についての対策は、先行して実施する。
 こうして津波影響のあるすべての管理区域の建屋外壁にて止水する方針で工事をし、工事で不要になった泥を使って海沿いの土地を盛り土しました。
盛り土を防潮堤の代わりにして、津波の遡上を低減させるためです。
それでも浸水は防げないので建屋の入り口を防水扉やシャッターに取り替えたり、防潮堰を設ける対策を施しました。
 東日本大震災で東海第二を襲った津波は、対策工事前のポンプ室側壁を40cm上まわっていました。
外部電源は2系統とも止まったので、もし対策をしていなければ非常用ディーゼル発電も止まり電源喪失につながる事態にもなりえたのです。
これについて安保氏は、「側壁のかさ上げが効いていた」と答えました。

★東海第二は対策をとって電源喪失を免れたのですが、東電は「経営的にどうなのかって話でね」ということで対策を先延ばしにした結果、あの事故が起きたのです。
刑事訴訟の裁判傍聴記をお伝えしていますが、私の拙い報告よりも、もっとわかりやすく弁護団の先生方が報告してくださる報告会が開かれます。
*9月2日(日)14:00〜16:30@郡山市ビッグアイ7F大会議室
*9月30日(日)14:00〜16:30@専修大学神田キャンパス7号館大学院棟3F731室
チラシを添付します。
ぜひご参加ください。                        

いちえ

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