HOME » 一枝通信»2018年9月9日号「福島原発刑事訴訟公判傍聴記」

2018年9月9日号「福島原発刑事訴訟公判傍聴記」


◎第24回公判
 9月5日10:00〜17:00、第24回公判が開かれました。
●証人尋問
 この日の証人は東電社員で、原子力設備管理部の建築グループにいた西村功さんでした。
地震の揺れの想定と津波高の想定とを、どう調整して対策に取り入れるかが、西村さんの仕事でした。
東通原発では推本の長期評価を地震対策に取り入れて、津波高7.7mよりも高い想定値で対策をしていましたが、自分の専門は地震の分野の方なので津波のことはよく判らなかったと証言しました。
●調書読み上げ
 検察官役の指定弁護士が、元東電幹部の供述調書を読み上げました。
地震対策センター部長だった山下和彦さんが検察に供述していた内容ですが、当初は山下さん本人の証人尋問が行われる予定でした。
けれど体調不良ということなのか理由は明かされませんでしたが、永淵健一裁判長は山下さんの現状は法廷で証言できる状態ではないとして、調書を採用したのです。
 渋村弁護士が淡々と2時間近くにわたって読み上げた供述調書4通の全文からは、驚くような事実が浮かんできました。
そしてこれらは証拠として採用されるのです。
 2002年に地震調査研究推進本部(地震本部・推本)が発表した「長期評価」では、福島沖でも7.7mを超える津波が起きることが想定され、それに対して東電でも対策が考慮されていました。
2008年2月に開かれた勝俣氏、武藤氏、武黒氏らが出席する“御前会議”で、山下氏は長期評価を取り入れた対策を取り入れる必要を報告し、それは了承されました。
そしてまた、翌3月の常務会でもそれは認められました。
 それを受けて東電の津波対策部署は長期評価に基づく津波高を計算して、15.7mという結果を6月10日に武藤氏に報告しました。
その会合終了時点でも、津波対策を取り込む方針は維持されていたと、山下氏は証言しています。
そして7月の会議で武藤氏は“ちゃぶ台返し”をして、津波対策を先送りにしました。
 この流れはこれまでにも明らかにされていましたが、今回の調書によって2月の御前会議でも3月の常務会でも長期評価を取り入れることが了承されていたことがはっきり判りました。
 武藤氏のちゃぶ台返し発言によって津波対策が先送りになった理由について、山下氏は証言しています。
防潮堤建設には数百億円の費用がかかることと、対策工事が済むまで数年間原発を停止しなければならないことを危惧したと、次のように証言しています。
「当時は柏崎刈羽が全機停止中で火力発電で対応していたので収支が悪かった。福島第一まで停止したらさらに収支は悪化する。福一の停止は何としても避けたかった」
 また山下氏は「15.7mではなく10mを超えない数値だったら、対策を講じる方針は維持されただろう」と証言しています。
そして武藤氏から、土木学会の研究者への根回しが指示されたことも証言されました。
 検察官が、「津波は10mを超える可能性があったので防潮堤を作らないとしても、なんらかの暫定的な対策を考えなかったのか」という質問に、「2007年の中越沖地震で想定を上回る津波を経験していたので、同じように想定を上回る津波が、また起こるとは思わなかった」と答えた山下氏の証言が読み上げられると、傍聴席がざわめきました。
 だって、一度起きたことは繰り返すかもしれないと考えて対策を取るのが、常識ではないでしょうか?
*この日の傍聴を終えて
これまでの23回の公判でも、東電元幹部の勝俣、武藤、武黒の3被告に責任があったことははっきりしていますが、けれどもこれまでの証言の中では、長期評価を取り入れて津波対策を考慮するのが東電の社としての方針であったことは証言されていなかったのです。
土木学会の報告として出した時に、ちゃぶ台返しをされたというように証言されていたのです。
それが“御前会議”で了承され、常務会でも認められていたことがはっきり証言され、社としての方針となっていたのに、経営上からのちゃぶ台返しだったことが明らかになったのです。
 この日の山下センター長の調書が読み上げられた時、大いに疑問が湧きました。
検察はこれだけの調書を取っていながら、なぜ3人を不起訴にしたのか(それも2回も)ということです。
検察審査会で強制起訴にならなければ、罪を問われることもなかったというのでは納得がいきません。
これは検察のもみ消し工作だったのではないのでしょうか?

◎第25回公判
 9月7日、第25回公判が開かれました。
●証人尋問①講義
 この日は被告弁護側からの証人で、東北大学大学院の地震学教授の松澤暢さん(地震本部委員の一人)でした。
松澤さんは宣誓書を読み上げたあと、通常は証言台の椅子に着席して証言するのですが「大学では立って講義をしているので、立ったままでいいでしょうか」と裁判官に問い了解を得て、立って話しました。
 パソコンでスクリーンに映し出される画面を見ながら、法廷内にいる私たちはお昼の休廷時間を挟んで約3時間、どっぷりと松澤教授の地震学の講義を受けました。
と、言いたいほど「皆さんが考える地震と、われわれ地震学者が考える地震はこのような点が違っています」ということから始まっての地震についての話でした。
 松澤さんの“講義”で、印象深かったのは2011年3月9日に宮城沖でマグニチュード7.3の地震が起きた時に河北新報から取材を受け、「連動型地震の危険性は低下している」というコメントを出してそれが10日の紙面に載ったが、翌11日に東日本大震災が起き、スクリーンに河北新報のその記事を映し、最大の誤報だったことを悔やんでいると発言したことです。
 また「歴史上、戦に負けた武将の3つの敗因」として、「・情報不足・思い込み・慢心」を挙げ、自分もそれに当たっていたことを話しました。
●証人尋問②尋問
 午後の“講義”が終わって、被告側弁護士の宮村さんが尋問したのは東北地方太平洋沖の地震についてでしたが、松澤さんは地震学上の地震を説明しました。
「皆さんが『地震だ』と思うのは地面が揺れた時で、それは地震の結果であって、地震波が発生して、発生した地震波が伝播した結果地面が揺れる」などと説明し、マグニチュードと震度の違いを言いました。
ただし気象庁の震度とマグニチュードは大体同じであることも付け加えて。
 宮村さんが推本の「長期評価」という言葉の意味を問い「予知ではなく長期評価とした理由」を尋ねると「過去に起きたことは未来にも起きるだろう」とのことからだと思うと答えました。
 検察官役の指定弁護士、久保内さんの質問に対しては、歴史地震の研究はあまりしていないと答え、自分の専門は近代的観測からの地震学でこの100年くらいのことだが、それが重
要だと答えました。
また久保内さんの「地震、津波、活断層など様々な人が地震本部に関わっているが、そこで出された長期評価の知見をどう考えるか」との質問には、「理学的な知見は大事だから関わっていこうと思った」ことや、「防災は得意分野ではないので逃げ出したいと思った」とも答えました。
また、久保内さんの質問に対して自分は近代の地震を専門としていて歴史地震のことはよく判らないが、自分には判らないので歴史地震の研究者の知見は尊重していると答えました。
 右陪席の今井さん、左陪席の柏戸さん、永淵裁判長からも質問があり答えましたが、目新しいことはありませんでした。
●報告会
*海渡弁護士の話
 この日の証人の松澤さんは各地で起きている国が国家賠償で訴えられている裁判で、国を擁護するような意見書を書いている人ですが、だから東電の味方をしてくれるだろうと思って証人として出したのでしょうが、今日は大学の講義のようでした。
そして尋問の中では、宮村さんが苦戦していました。
東電に有利な証言を引き出そうとするのですが、一応は認めるのですが、でもなんとかかんとか言いながら東電が言わせたいようには言わないぞというような感じを、ちょっと受けました。
*甫守弁護士
 松澤さんは3・11後に、どうして我々は予見できなかったかという報告を出したりしていて反省しているように思えていたので、こういう理学者然とした人が国に有利になるような意見書を出すのを見て、国はそこまでたぶらかして取り込んでいくのかなと思っていたが、長期評価は津波対策に入れなくて良かったような知見ではないのだと、松澤さん自身が比較的はっきり証言したのではないか。
 松澤さん自身、地震のメカニズムはよく判らないことがあるが、よく判らない中で理学者としての見解を示す必要があるだろうと、地震評価部会に参加して長期評価をしていたと発言していた。
東電に必ずしも都合の良い証言ではなかったのではないか。
*大川弁護士
 こちらにとって有利ではないかもしれないが、不利な証言ではなかった。
宮村さんはどの証人にも同じように一生懸命言わせようとしているのは、「どこでも発生を積極的に根拠づける知見は?」という質問だが、松澤さんは「私の知る限りなかった」と答えたが、積極的に根拠づけることしか採択しなくて良いということではない。積極的でなくても「ない」ということを根拠づけることがあるならしなくても良いかもしれないが、そうでない限りは一般の長期評価でも対策を立てなくてはならないと、松澤証人も考えていて、「福島沖で起きないかもしれないが、起きないと言える根拠がなかったので考慮した」と言っている。
*武藤類子さん
 次回は9月18日(火)です。
前日の17日には「さようなら原発」の集会があり、佐藤和良団長も話しますから、みなさんご参加ください。
「週刊金曜日」1198号(8月31日発売)に、この裁判の記事が載っていますから、ぜひお読みください。
本日(9月7日)発売の『世界』では特集を組んで「安全神話、ふたたび」で原発事故とこの裁判を取り上げています。こちらもぜひお読みください。
 今日はありがとうございました。

●「東電刑事裁判報告会」 チラシを添付します。
この裁判の報告会が開かれます。
日時:9月30日(日)14:00〜16:30(開場13:30)
場所:専修大学神田キャンパス7号館(大学院棟)3階731教室
入場:無料
内容:弁護団からの報告 福島からのアピール 歌
ぜひ多くの方に参加していただきたく思います。              

いちえ

0件の読者の声 »

コメントはまだありません。

この投稿へのコメントの RSS フィード。

本の感想をお寄せください。

編集部で掲載の可否を判断させていただきます。
あらかじめご了承ください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)




TOPへ戻る