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2019年7月23日号「7月9日福島地裁・裁判傍聴へ②」


◎市民会館での集会(①からの続き)
●署名集計報告
 原告団代表の今野寿美雄さんから、「子ども脱被ばく裁判支援」署名の集計報告がありました。
前回集計から今回までに、4,546筆。累計で73,959筆になりました。
今回も開廷前に、裁判所に届けられました。
●今回の裁判について
 弁護団長の井戸謙一弁護士から、今回の裁判ではどのような事が行われるのか説明されました。
 原告からは準備書面73を提出しました。
前回、被告国からは準備書面12、13が出されましたが、原告準備書面73は、それに対する反論です。
準備書面12は低線量被ばくについて、準備書面13は内部被曝について、いずれもリスクはないと主張しているのでそれに対しての反論ですが、中身については法廷で、弁護士が入れ替わり立ち替わり自分の得意とする分野で反論を主張します。
今までは一つの準備書面については、そのテーマが得意な弁護士が一人で説明していましたが、今回の準備書面は弁護団みんなの合作ですので、入れ替わり立ち替わり説明することになります。
 国からは14、15という準備書面が出ています。
14は、前回我々が出したプルトニウムについての反論です。
福島原発事故由来のプルトニウムは確かに検出されているが、とそれは認めているのですが、非常に微量なのでリスクはないという内容の書面です。
 15は、前回こちらから、放射線に対する子どもの感受性は高いのかどうかに対する国の考えについて求釈明を提出していたのですが、それに対する答えで、以下のように言ってます。
 放射線防護については、子どもの感受性は大人より高いという考え方に依拠して、防護対策をしている。
感受性が本当に高いのかどうか、低線量被ばくについての子どもの感受性が高いかどうかは、それを高いという科学的根拠はない。
根拠はないが、防護対策としては高いという前提を取っている。
 科学的根拠はないが対策は取っていると、非常に矛盾したことを言ってます。
 そして今回原告側からは、証人申請をしています。
今日は、証人について何人かの採否が決まるはずです。
申請した証人は、河野益近さん、郷地秀夫医師、西尾正道医師、崎山比早子さん、井戸川克隆さん、山下俊一氏、鈴木眞一氏の7名です。
 河野さんと郷地医師には放射線微粒子の健康リスクの問題について、西尾医師には内部被曝一般の問題について、崎山さんには低線量被曝について証言をいただこうと思っています。
井戸川克隆さんには事故直後の放射線防護対策の無為無策について、双葉町長として直接色々な経験をされているので、その経験をお話しいただく。
山下俊一氏は彼の発言内容自体が、この裁判の請求の根拠になっています。
鈴木眞一氏については、初期の無為無策の原因としていま甲状腺がんの被害が出てきているのではないか、これが過剰診断であり被ばくとの因果関係はないむしろ必要がない手術をしているという意見が出ているので、実際に執刀した鈴木眞一氏に必要がない手術だったのかどうかを証言してもらおうと思っています。
 原告側としては更に6人程度の原告本人の方に証言して頂く予定ですが、申請書はまだ出していません。
次回以降5回の期日で、それぞれ尋問が行われことになると思います。
 被告側からも申請があってもおかしくないのですが、現時点では被告側からは申請が届いていません。
県は、県からも山下俊一氏を証人申請すると、口頭で言っておりました。
国からは放射線微粒子の問題について健康リスクはないのだと準備書面を出していますから、それについて専門家の申請があるかと思っていましたが、現在のところ申請書は届いていません。
 そういうような状況で、今日それらの申請についての採否が決定されることになるかと思います。

◎福島地裁
●原告代理人意見陳述
*被告国側が提出した準備書面12に対する反論
①はじめに
②「LNTモデルの仮説が科学的に実証されていないこと」について
③「各種論文に基づいた原告らの主張が誤りであること」について
④「第4 福島県県民健康調査の結果に係る原告らの主張に理由がないこと」について
⑤「第5 子どもの感受性について原告らの主張に理由がないこと」について
*被告国側が提出した準備書面13に対する反論
①はじめに
②被告の「第2 内部被ばくの健康リスクの考え方及びセシウム含有不溶性微粒子摂取の健康リスクについて」に対して
③「請求原因⑴、⑶、⑷及び損害に係る内部被ばくに関する原告らの主張は、独自の見解であり、失当であること等」について
④「セシウム含有不溶性放射性微粒子」摂取の危険性を述べる原告らの主張は理由がなく、同主張を前提としても、原告らが本訴で主張する「年1mSv以下の被ばくであっても、無用な被ばくによる健康被害を心配しないで生活する利益」なるものが国賠法の救済が得られる具体的権利ないし法的利益であるとはいえないこと」について
*原告準備書面67に関する書証の追加と求釈明

 上記について、午前中の集会で井戸弁護士が説明されたように、原告代理人の光前弁護士、古川弁護士、崔弁護士、井戸弁護士らが代わる代わる意見を述べました。
●原告本人意見陳述 N・Kさん
 二本松市内の自宅で、夫、二人の子ども、夫の母の5人で生活しています。
上の子どもは既に成人していますが、下の子は現在9歳で福島原発事故当時は誕生日前の乳児でした。
夫はサラリーマンであり、私は主婦として家庭にいます。
 2011年3月11日の大地震で自宅建物は少しヒビが入りましたが、私たちはそのまま住み続けていました。
その後、福島第一原発時爆発が続きましたが、自宅は原発とは距離があったし、行政から何の指示もなかったので危機意識を持つこともなく、それまでと変わらぬ暮らしを続け、幼い二男を連れて買い物等に外出もしていました。
その後知人から被ばくの怖さを聞いたり、講演会に出かけたりする中で、被ばくによる健康リスクについて徐々に知識を持つようになったのです。
 幼い二男の健康が心配になり、条件が許せば避難したいと思いましたが、夫には仕事があるし母子だけの避難には踏み切れませんでした。
その代わり、数日間福島を離れるというプチ避難を何度もし、春・夏・冬には沖縄や北海道の市民団体を頼って、必ず二男を保養に連れ出していました。
 夫は当初、「国が大丈夫と言ってるのだから、大丈夫だろう」という考えでしたから、プチ避難や保養に関しては夫婦間で何度も揉めました。
その後、夫にも講演会に参加してもらったりする中で、夫も少しずつ理解するようになりました。
 二男は、甲状腺に小さな嚢胞の存在を指摘されたことがありました。
また、原発事故から2〜3年経過した頃から、絶えず鼻水を出すようになり病院で診察を受け「蓄膿症」と診断され、一時期投薬治療を受けましたが、湿疹が出たこともあって現在は投薬を止めています。
症状は改善されず、二男が蓄膿症になった原因はわかりませんが、被ばくも原因ではないかという思いを捨て去ることができません。
また、二男には外遊びをあまりさせなかったので、二男自身も外に出たがらないようになってしまい、その点でも不憫でなりません。
 今でも自宅付近では、0,2マイクロシーベルト程度の線量があり、安心できる数値ではありません。
地元の食材は使わない、洗濯物を外に干さない等の配慮は今でも続けていますが、近所の人や知人と、被ばく問題については話しづらい雰囲気になってしまいました。
 福島原発事故前、私は被ばく問題について、全く知識がありませんでした。
原発事故が怒った後も、当初の1ヶ月くらいはほとんど警戒心を持っておらず、何の防護対策もしていませんでした。
安定ヨウ素剤のことも知りませんでした。
私が自宅周辺の空間線量の数値を初めて知ったのは、2011年5月か6月になって、市の広報を見た時だったと思います。
しかし、マイクロシーベルトの数値を見ても、当時は、その意味がわからず危険か安全かの判断もできませんでした。
 私は、事故当初の約1ヶ月の間に、二男に無用な被ばくをさせてしまったのではないかと心配しています。
この頃は買い物等に二男を連れ出していました。
二男はまだ母乳を飲んでいたので母体が栄養を取らねばいけないと思い、出荷停止になっていた牛乳を貰って毎日のように飲んでいました。
当時の私は、牛乳が出荷停止になった意味さえ判っていなかったのです。
母乳に放射能が含まれていたのではないかとの、不安は尽きません。
将来、二男に被ばくによる健康被害が生じたら、悔やんでも悔やみきれません。
 私は今でも長期の休みには、二男を保養に行かせています。
子ども達にはまだまだ保養が必要だと思いますが、行政が保養について全く協力してくれないので、保養に関する情報が若いお母さんたちに拡がらないのが残念です。
 私は、行政が「安全、安心」というのではなく、事故直後から、線量とその数字が持つ意味を住民に正しく伝え、住民一人一人が被ばくを避けるための援助をすべきだったと思います。
そして、せめて自宅の除染が終わるまでの間、行政の責任で避難させて欲しかったと思います。
 私は、自分が裁判の原告になるなど、思ってもみませんでした。
できれば裁判などには、関わりたくありません。
しかし、自分の子どもだけでなく、子どもたち皆を大切に守っていく社会になってもらうためには、声を上げることができる親が声をあげないといけないと思いました。
裁判官の皆様には、子どもたちの健康を守るという大切な義務を怠った国や福島県の責任を、はっきりと認めていただきますようお願いいたします。

◎市民会館で
 閉廷後に、また市民会館でこの日の裁判についての記者会見と、今後についての意見交換会がありました。
●記者会見
*意見陳述をした原告本人のN・Kさんへの質疑応答
Q:白石 草さん(Our Planet−TV)
 事故直後1ヶ月ほどの間、情報も無くシーベルトの意味も知らなかった混乱の中で、行政の責任に対してどう考えているかということと、この裁判でどのような責任を取って欲しいと考えているかお聞かせください。
A:考えてもいなかったことが起きて、ニュースで爆発を見ても遠くのことと思っていました。
直後から避難していたら、被ばくを避けられたかと思っています。
線量がとても高かった時期に1週間でも2週間でも、被ばくから子どもを守れなかったことを、強く後悔しています。
 今後については、自分のこどもだけではなくすべての子どもたちに、保養が平等に与えられるような国になって欲しいので、それを実行して欲しいと強く思っています。
Q:藍原寛子さん(フリーランス・ジャーナリスト)
 多くの母親が、公の場で実名を出したり顔を出して話せないと言われていますが、Nさんは実名で証言され、今日は写真撮影にも応じて下さりありがとうございます。
 裁判でこういう証言をするのは、ご自身にとって高いハードルだったでしょうか。
すごく勇気がいることだったでしょうか。
また、そもそも裁判で原告になるということには、どういうきっかけがあったのでしょうか。
A:自分が原告になるとは、考えてもいないことでした。
事故がなければこんなことはなかっただろうと思いますが、それ以上に子どもを守るということで弁護士の先生方を始め、また、子どもを守るために一生懸命やって下さっている方々がいて、それを声にしないでどうするのかという思いが自分にもあって、やっぱり私もそれを伝えていくことで、これから先の子どもたちのためにもなるのかと考え、話をしようと思いました。
Q:ご自分の子どもだけではなく、すべての子どもたちのためにもということですね。A:はい、そうです。
Q:やっぱり勇気がいったことですか?
A:はい。
●弁護団団長の井戸弁護士から今日の裁判について
 開廷時刻が大変遅れましたが、それは事前協議で証人尋問について誰を採用してどの期日で聞くのか、議論が熱していたからです。
 原告側からは証人を河野益近氏、郷地秀夫医師、西尾正道医師、崎山比早子さん、井戸川克隆さん、山下俊一氏、鈴木眞一氏の7名を申請していましたが、被告国側は河野、郷地、崎山、西尾、井戸川の5名については必要ないと言いました。
しかし裁判所は、もう事前に決めていたようで原告側の意見を聞くまでもなく、河野、郷地の両氏については採用する、西尾、井戸川両氏は、まだ陳述書・意見書が出せていないので、それを見た上で判断するということで、とりあえず保留となりました。
 山下俊一氏、鈴木眞一氏の2名は採用すると。(会場から「ホゥ!」と声が上がる)
崎山さんは近々、福岡地裁で尋問が予定されており、また、京都地裁で詳細な尋問をしていてその調書は既にでています。
その後の世界の研究経過を証言してもらおうと思って申請しましたが、福岡地裁でそういうことを証言するでしょうから、それが出れば十分で、改めて福島でやる必要がないのではないかということで、まだ正式決定ではないのですが不採用になるかと思います。
井戸川さんと西尾さんは留保なので、採用させる方向で、今後押していきたいです。
 事前の進行協議ではいつ誰に聞くかで、揉めました。
主尋問と反対尋問を同じ日にするか、主尋問で原告側が聞いて、そのすぐ後で被告側の反対尋問にするのか、別の日にするのかということです。
主尋問をすれば調書ができますから、その調書を見て相手方はそれを検討して反対尋問をするとなれば、期日を別の日にしなければいけない。
国は反対尋問のために時間が欲しいから別の期日にして欲しいと主張し、これは裁判所も同じ意向で、裁判所側も専門家についてはきっちりと質問したいということで、別の期日でやる方向になりました。
 証人それぞれの都合もあって、次回の10月1日は午前中は郷地さんの主尋問、午後は河野さんの主尋問で、まだ少し時間がありますからその後原告1名の主尋問をします。
11月13日の午前中は、郷地さんの主尋問で、この日の午後と12月19日、1月13日は、誰をどういう順でやるかについてはまだ決まらず、9月5日の進行協議で決まります。
 山下俊一氏の尋問は来年3月4日に主尋問、反対尋問を同一期日でします。
山下氏は5回の期日のうち、3月4日しか都合がつかないとのことで、そうなりました。
 次回10月1日の郷地、河野両氏の専門家には、始めにパワポでプレゼンテーションをしてもらい、その後原告代理人から一問一答形式で主尋問に入ります。
反対尋問は、プレゼンテーションを基にすることが決まりました。
 国は鈴木眞一氏の採用を嫌がっているようですが、裁判所は鈴木氏の尋問をしたいと思っているようです。
●傍聴した原告らの声
*今野寿美雄さん(原告団団長)
 いよいよ山下俊一を引っ張り出せることが、とても嬉しいです。
鈴木眞一氏については不要な手術をしていない、やらなきゃいけない手術をしたと言っているので、きちんと証言を取りたいです。
河野益近氏は専門家としてセシウムボールのサンプルを採って、今までになかった新しい知見を法廷で話してもらうことは大きな意味を持つと思っています。
*横田麻美さん
 いま団長が言ったのと同じ思いですが、専門家が出てきて証言してくれることで、今までモヤモヤしていたものが前に進む気がします。
*会場から
 やっとこの時が来たという思いと、長くかかったなという思いとで、複雑な思いです。
意見陳述した原告のNさんと私も同じ思いで、裁判に関わるとは自分で思っていませんでした。
二人の息子の鼻血や、私自身シングルマザーなので、子どもだけを保養に出す辛さで胸がいっぱいで、本当にここが安全なら、区の人がここに住んで欲しいという思います。
子どもたちを無用な被ばくから守るには、国が保養をきちんとして欲しい思いを、新たに強く思いました。
 2014年8月29日に福島地裁に、子ども脱被ばく裁判を提訴した日に私の息子は当時小2でしたが、「ママ、僕も言いたいことがある」と言いました。
現在中1ですが、自律神経の病気になっています。
私には病気の原因は何か判りませんが、でも、あの時によぎりました。
もしかしたらこの子も、将来なんらかの病気になるかもしれないとよぎったことが、いま現実になっています。
 ですからこの裁判は、本当に負けるわけにはいかない思いで、今日も参加しました。

★この裁判は
 以前にもお伝えしましたが、再度繰り返します。
この裁判は「子どもたちに被ばくの心配のない環境で教育を受ける権利が保障されていることの確認」としての「子ども人権裁判」、「原発事故後、子どもたちに被ばくを避ける措置を怠り、無用な被ばくをさせた責任」「親子裁判」、これらの権利と責任について、国と県を訴えた二つの裁判を併せて「子ども脱被ばく裁判」として闘っているものです。
 長々と第20回期日の報告をいたしました。
原告団長の今野さんも言っていましたが、いよいよあの山下俊一を証言台に立たせます。
また他にも証人を呼びますから、裁判費用がこれから、まだまだかかります。
原告団は裁判費用100万円カンパを呼びかけています。
 どうぞ、皆様のご協力をお願いいたします。

いちえ

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