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「愛の腰巻装丁問答」6

新宿紀伊国屋の詩歌の書棚で、田村隆一詩集『腐敗性物資』に出会ったのは、19歳の春だった。タイトルと著者名に理由もなく惹かれた。冒頭の「復刻画」に全身を射抜かれた。

腐刻画
ドイツの腐刻画でみた或る風景が いま彼の眼前にあ
る それは黄昏から夜に入ってゆく古代都市の俯瞰図の
ようでもあり あるいは深夜から未明に導かれてゆく近
代の懸崖を模した写実画のごとくにも想われた
この男 つまり私が語りはじめた彼は 若年にして父
を殺した その秋、母親は美しく発狂した

1998年、詩人は最後の詩集『1999』(集英社)を刊行した。
さよなら 遺伝子と電子工学だけを残したままの
人間の世紀末
1999(「蟻」)
田村隆一は、21世紀などまっぴらご免とばかりに、1998年8月、食道癌のため亡くなった。享年75。
「死よ、おごる勿」が、詩人の絶筆となった。「死」がまた「詩」であることは言うまでもない。

2007年、ねじめ正一は『荒地の恋』を上梓した。荒地とはT.S.エリオットの詩集「荒地」からとった田村隆一や鮎川信夫らが属していた詩誌名である。
彼の恋の顛末にさして興味はないが、オビにある「詩神と酒神に愛された男」に異論を挟む人はいないだろう。酒も女も、死までも田村にとってはすべからくが〝詩〟であった。
晩年、全国紙の一面に掲載された雑誌「宝島社」の広告が話題になった。「おじいちゃんにも、セックスを。」のコピーが似合いのは、田村隆一をおいてほかにはいない。
26日は詩人の21回目の命日である。

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