医療事故は自分には無関係の世界のことかと思っていたが、身近に起こるものだ。しかも、近親者が医療事故(もしくは、その疑いあり)に遭ったという人たちが意外に多い事実も知った。誰もがいつ当事者になるかもしれない、ということなのだ。
だから、ぼくの身近で起き、病院との交渉に関わった事例を紹介して、この問題について考えていこうと考えた。長野市民新聞(2012年2月28日)に「医療事故」と題して書いたコラムをここに掲載しよう。
医療事故について、関係者の一人として書こう。事故に遭った当事者は、そのこと自体を早く忘れたい。だから事実を公にせず、そっとしておいてほしい。その気持ちが分かる。ゆえにここでは事実と異なるが、被害者を伯父として話を進める。
長野市内の大きな病院で内臓の手術をした伯父は術後からずっと腹痛を訴えていた。しかし、担当医は精神的なものだろうと言う。ぼくはそれを信じて、気にし過ぎるからだよ、と伯父を諭し続けた。
6カ月検診でCTスキャンを行った。その時、痛みの原因が判明した。アイマスクのような形の器具が体内に残っていたのだ。大きさは長さ23センチ、幅7センチ、厚さ5ミリ。シリコン素材で、レントゲン写真に映らないため、発見できなかったと言う。
即、再手術が決まった。その場に立ち合ってから帰宅したぼくに電話がかかった。「院長が謝りたいから病院に来てほしい」とのこと。お断りした。
後日、慰謝料が提示された。「●十万円でいかがでしょう」と口頭で。金額の根拠は示されない。文書での説明を求めたところ、提案書が送られてきたが、納得できない。再質問をして、再回答が届き、慰謝料が再提案された。倍額になっていた。
法律には素人なので、その金額の妥当性は分からない。弁護士に相談しようかとも考えたが、伯父は早期の解決を望んだため、和解契約を結ぶことにした。
間もなく和解契約書が作成された。「口外しない」という一文があった。ぼくが削除を求めたら、すんなり要求は通った。そんな簡単な話なら、この一文を端から入れる必要はないはず、と伝えた。あれから以降、この病院の和解契約書から「口外しない」は削除されるようになっただろうか。
医療事故が発覚した当日、「医師といえども人間なのでミスは起こってしまう」と病院側は釈明した。その通りなのだろう。医者個人を責める気はない。再手術によって痛みがとれた伯父は、新しい担当医に「本当によくしてくれる」と感謝している。
しかし、一方で、患者は医療事故がわが身に起こるとは考えていない。病院側とは歴然とした意識の差がある。これを縮めるためには、情報を公開し、事故の経験を無駄にしないことが大事なはず。口外は大いに必要だ。
さて、新聞には固有名詞は出さなかったが、本文にある「長野市内の大きな病院」とは長野赤十字病院である。和解が成立したのは2011年12月末だった。
お腹の中に置き忘れられていた器具の写真も掲載しておこう。なぜこんな大きなものが残されてしまったのか、驚かれるのではないだろうか。その理由を病院側から説明を受けたが、ここでは省略する。この理由も含め、いずれ『たぁくらたぁ』でもっと詳しい経緯を書くつもりだ。
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最後にお願いがあります。『たぁくらたぁ』で医療事故のついての特集も組むつもりでいるので、みなさん自身が、あるいは近親者が医療事故にあって、そのとき病院はどう対応したのか、という情報があればぜひ教えてください。秘密を厳守いたします。その上で、お話を伺わせていただければありがたいのです。野池までメールでご連絡ください。
野池メール:こちらまで
(野池元基)








